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丸の内331から

2匹目の甲斐犬、安藤忠雄、そしてフィレンツェ(2004年2月29日)

出張勝也(でばり・かつや)
株式会社オデッセイ コミュニケーションズ代表取締役社長

1月ももう終わろうかという時期になりましたが、みなさんは年末年始をいかがお過ごしになりましたか。僕はどこに行くこともなく、ずっと家にいて犬と遊んだり、本を読んだりして、のんびりと過ごしました。

甲斐犬「クウ」


ひとつビッグ・ニュースがあります。昨年末、カイ(メスの甲斐犬で、今年の2月に5歳)に次いで、2匹目の甲斐犬がわが家に来ました。今度はオスの子犬をもらってきました。名前は、「空」と書いて「クウ」とすることにしました。「クウ」と「カイ」で、「空海」となります(「カイ」のほうは特に海を意識して付けたわけではないので、ちょっとこじつけです!)。

クウクウは、生まれてまだ2カ月、わが家に来て1カ月。今一番かわいい時期です(甲斐犬の子犬は、小熊みたいな顔形をしています)。実は毎日会社にも連れて行っています。カイはひとりにしていても大丈夫ですが、クウはまだ下の世話ができない上に、社交性や社会性を身につけないといけない時期なので、できるだけ一緒にいてあげることが必要なのです。

多くの方が、甲斐犬のことをご存じないかもしれませんが、柴、秋田、紀州などと並ぶ、立派な日本犬の一種です。今度わが家に来たクウは、まっ黒の毛のまま大きくなりそうですが、多くの甲斐犬は、黒虎毛あるいは赤虎毛でして、カイは黒虎です。1年に一度、甲斐犬のふるさと・山梨では甲斐犬愛護会による展覧会もあり、今年はクウを連れて、1歳未満の部に参加してみようとも考えています。

クウ世の中、洋犬が人気です。コマーシャルなどでも、豊かな生活を送る家族が飼っているのは、決まってレトリバー系の大型犬であったりします。でも、僕は日本犬が大好きです。だって、日本犬は僕たち日本人と何千年の昔から狩猟を行い、生活もともにしてくれている友達ですからね。もしかすると、僕たち日本人の祖先とともに、大陸や朝鮮半島から一緒に来てくれたのかもしれないし(だから、僕たちとのつき合いは何千年どころか、何万年にもなるかもしれないのだ!)。

住宅メーカーの広告などにでてくるのは、いつもゴールデンレトリバーやラブラドールレトリバー。たしかに、レトリバーは人なつっこくて、賢い犬だし、レトリバーが飼える広さの家を持っていることは、豊かであるということなのかもしれません。でも、僕たち日本人には日本犬が一番だと僕は信じています。みなさんは、どう思われますか?

「戦う建築家」安藤忠雄


80年代のバブルのころから、僕が一番フラストレーションを感じているのは、住宅問題です。たしかにピークのころに比べると、昨今、住宅の値段は半分程度になっていますが、欧米諸国と比べてみても、空間の広さ、建物の質を考えると、到底満足できるようなレベルにはなっていないと思います。

今月、安藤忠雄さんの本を2冊ほど読みました。『光の教会・安藤忠雄の現場』(平松剛著、建築資料研究所)と『建築を語る』(安藤忠雄著、東京大学出版会)です。『光の教会・安藤忠雄の現場』は、1989年バブル経済のまっただ中に、安藤忠雄が設計した大阪府茨木市の教会建築を巡る安藤忠雄をはじめとする関係者の物語で、『建築を語る』は、安藤忠雄の東大での講義録です。

以前から、雑誌や新聞などでも記事は拝見していましたし、2年ほど前には講演をお聞きする機会もありましたが、この2冊を読んで、安藤忠雄が戦いのうちに仕事を行ってきたことを知りました。高卒の学歴、旅の中で学んでいった20代、頼まれもしないのにプランを作り提案を行ってきたこと。これらの本に書かれている安藤さんの仕事や生きることに対する姿勢に、とても共感を持ちました。安藤忠雄の名前は知っていても、彼のことをよく知らない人には、ぜひおすすめしたい2冊です。同じく東京大学出版会から、安藤忠雄著で『連戦連敗』という本が出ています。次はこの本を読んでみようと思っています。

10数年ぶりのフィレンツェ


17日から数日、仕事でイタリア・フィレンツェを訪問しました。安藤さんの本は、イタリアに行く飛行機の中でも読みました。アメリカの取引先が主催する会合が、この町の郊外の丘の上のホテル(以前教会だった建物!)であったからなのですが、フィレンツェは今回が3回目です。1989年以来ではないかと思いますから、もう15年ほど前になります。会議が中心でしたので、観光をする時間もほとんどなかったのが残念でしたが、この町には、少し歩くだけでも訪問者を幸せな気持ちにしてくれる何かがあるように思えます。

フィレンツェ僕の一番好きな映画のひとつ『眺めのいい部屋』(A Room With A View)は、ここフィレンツェが舞台です。都市の中心部はルネサンスからの建物が大切に保存され、修復作業も行われています。ちょっと郊外に足を運ぶと、丘の途中や上に、点々と古くからの家が建っています。日本では京都でさえも、伝統的な町並みが破壊されています。

なんとなく、愚痴でこの文章を終えるのはいやなのですが、どうして僕たちの社会は、新しいモノを追いかけ回し、さまざまな時代を一緒に過ごしてきたモノたちをいとも簡単に捨てていくのか。安藤忠雄の本から得たことのひとつは、問題意識をずっと継続させていくことの大切さです。今年も考え続けていきたいと思います。


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