ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第32回 北澤きよみさん

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フィオレッラ・デル・コンテ(メッゾ・ソプラノ、コントラルト)
北澤きよみさん
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ミラノの大聖堂で聞こえた天からの鐘の音
- 佐々木
北澤さんは現在イタリアにお住まいでオペラ歌手としてご活躍されているのですが、いつごろからイタリアへ?
- 北澤
初めて行ったのが高校2年生の時でした。その後、夏は必ず3カ月はイタリアに行っていました。
- 佐々木
わ、羨ましい。日本生まれ、日本育ちでいらっしゃるので、音楽の勉強は、まずは日本の学校で?
- 北澤
ええ、日本のある音楽大学で勉強し、ある国立大学にも、海外の講習会にも行っていました。ザルツブルグの講習会に行ったあと、ミラノの友人や先生に挨拶をしに行ったりという感じでした。日本の大学にも籍があったもので、卒業しなきゃいけないということで、日本に戻って来たりしていたんです。
でもあるとき、日本に帰る前にミラノに3日間寄ったら、友人が「ミラノスカラ座にあるオペラ研修所でオーディションがあるから受けてみない?」と言われて。
帰国前の気軽な気持ちで受けてみたら、1ラウンドではクリアした日本人は、わたしだけ。友人もみなだめだったんです。次の2ラウンドでは、G・ヴェルディの中のアリアを歌ったら15人ぐらいの中に残り、最終段階で校長先生にイタリア語で「アウグーリ!」と言われたんです。「おめでとう」っていう意味。そこで初めて「合格したんだなあ」と。
- 佐々木
それは、感激。すごいことですよね。でも何が起きたかわからなかったのでは?
- 北澤
そうなんですよ!(笑) でも、何かすでに道がつながっているという感じがしました。この道を歩いて行けるんだっていうふうに。
- 佐々木
瞬間的に、自分の未来が見えた。
- 北澤
そうです。はっきりと。実はオーディションに行く前に、ミラノにあるドゥオモ大聖堂に友だち3人とでお祈りに行ったんです。「一生懸命歌いますから、集中してよく歌えるように」って祈ったら、鐘が鳴ったんですよ、「チリン、チリン」って。あれ? と思ったんですが、お祈りし続けていたら、また「チリン、チリン」って鳴ったんです。友だちに「聞こえた?」って聞いたら、「なあに? 何も聞こえてない」って。
- 佐々木
えー!(笑) 天の声、天の鐘?
- 北澤
そう。その時、「いけるかも」って思ったんです。そうしたら、わたしだけ通った。「やっぱりあの鐘だ、ドゥオモの鐘がわたしに出発を告げたんだ」と思えて。
- 佐々木
なんだか、どきどきしてきました。ところで、オーディションに受かるとどういう人生展開になるんですか?(笑) 日本の大学はどうされたのですか?
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