ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第82回 丹下 一さん

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丹下 一さん
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日本への興味
- 丹下
当時は、ものすごいロマン。文学的なあこがれ。ワルシャワ大学で曽根崎心中やらせてもらったんですけど、全部原文でやるんです、千賀さんが語りで。
最初お話をいただいたときに「本当に原文でいいんですか?」って聞いたら、「それくらい、うちの学生は分かりますから」と平然と教授が言うんです。それが本当だった。大学4年生の子が、突然「この世の名残り、夜も名残り。死にに行く身をたとうれば……」って心中のシーンの原文をいきなり言い出して「僕、卒論は曽根崎心中なんです」って、もうびっくり。レベル高いんですよ、すごく。
山のように本読んでるし、学生たちが、日本語勉強して3年くらいで日常会話は不自由ないくらいしゃべる。で、みんなお金持ってないの。一緒にカフェに行ったときとかに、こっそりお財布のぞいたりすると500円くらいしか持ってない。でも、みんなおしゃれ。白いシャツに黒のベスト合わせたりとか、帽子も大好きだし。お金ないけどちゃんと探してくる。
- 佐々木
日本への思いっていうのは、今も変わらないんですか? ポーランドでは。
- 丹下
今は、変わりました。実は、この夏にちょっと行ってきたんです。もちろん今でも文学に対するあこがれは強くある。川端康成の人気は高いです。「川端康成における女性像」なんてテーマを女子学生がよく卒論のテーマに選びます。それからノーベル賞も取って有名な大江健三郎。それから源氏物語は、最近ワルシャワ大学日本学科の主任教授クリスティーナ・オカザキ先生の訳が出版されました。演劇が盛んな国ですから、近松も人気ですし鶴屋南北も。ほんと、日本の学生でこれ全部読んでる人いるのかな? って感じです。
と同時に壁の崩壊に続き、日本の企業が東欧にかなり進出している今、ビジネスシーンで具体的に日本語の需要が高まっている。日本語が使えた方が有利、ということで日本学科を選ぶ子が増えてきたんだそうです。こういう発想自体が過去にはなかったことで、多きな変化といえます。
- 佐々木
だけど、そんな古典を知ってたら、日本のビジネスマンもびっくりしちゃいますよね。就職試験で来たポーランド人が急に……。
- 丹下
「卒論は源氏物語です」とかってね(笑)。最初の話に戻るとすれば、昔の学生たちは「日本語を勉強したらビジネスで得をする」なんて思ってないんですよ。出会っちゃった。なんかで偶然読んだりして。
- 佐々木
"fall in love"ですね(笑)。
- 丹下
そう、恋。それで一生懸命勉強しているうちに、いつの間にか外交官として大使館で働いていたりする。駐日ポーランド大使館で働いている外交官の8割がたは、日本の東大に当たるワルシャワ大学や京都大学にあたる国立大学の日本学科の出身ですが、みんながみんな別に最初から外交官になろうなんて思ってない。日本に対するあこがれで一生懸命勉強していたら、いつの間にかエリートみたいになっちゃってる。そこが、素敵だなって思うんです。
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