個人投資家の運用方法を分類する一つの考え方に、トレーディングとインベストメントに分ける方法があります。この二つは、取引の期間ではなく「何に収益の理由を求めるか」によって分けられます。
インベストメントは、価値が新たに生まれている取引です。たとえば、原価が1,000円のポロシャツが、ブランド品として商品化されると8,000円で売れたりします。企業が価値を創造し、世の中の人がそれを認めているわけです。長期投資、インベストメントというのは、会社がビジネスによってこのような新しい価値を生み出す時に、株主として参加すること。新たな企業価値が生まれる前に株式投資をし、ある程度の期間を経て業績が上がれば株価も上がり、収益が得られるわけです。これは企業をお金の面で支えるサポーターということもできるでしょう。
一方、トレーディングは、マーケットのゆがみから収益を得ようとする取引。本来1000円の価値の株(実際には本当に株価がいくらかを知るのは難しいのですが)なのに、新製品が爆発的に売れるのではないかという思惑や、市場のうわさなどで例えば数分間で株価が50円上がったりすることがあります。しかし実際にこの会社の価値が数分で5%増えるはずはありません。つまり本質的な価値が変わっていないのに、思惑や期待で株価が上下する。このような価格変動では何も価値はうみだされていません。誰かが50円得したら、その裏では50円損している人がいる。つまり、市場参加者の全員の損益を合計するとゼロになる(手数料除く)わけです。
このように、インベストメントとトレーディングは、株式投資で利益を上げる理由が違います。どちらの投資をするかは別としても、みなさんが投資する時は、買う前に投資の理由を書いておくこと、売る値段とその理由も書いておくことが大切です。トレーディングはどちらかというと中上級者向け、かつ、日中も株価の変動を見ていられる人向け。最初にやるならインベストメントがおすすめです。その際は、投資する会社の先を見て新しい価値が生まれる前に投資しなければなりません。