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しかし、アラファト議長が死去し、去年1月、後任の議長にマフムード・アッバスが選ばれたことから、延び延びになっていた評議会選挙が、ようやく10年ぶりに実施されたのです。
ハマスが躍進した
投票は1月25日に行われました。前回の選挙をボイコットしたハマスは、今回は方針を転換して選挙に参加しました。結果は、これまでの与党のファタハが、132議席中45議席しかとれずに惨敗。これに対して、ハマスは74議席と過半数を制しました。
このハマスは、「イスラム原理主義過激派」と呼ばれます。ハマスという組織は、1987年に盲目のイスラム法学者ヤシン師によって創設されました。PLOには所属していません。当然のことながら、ファタハとは仲が良くありません。
また、ここでトリビアを。ハマスとは、正式には「イスラム抵抗運動」という名前です。このアラビア語の頭文字を並べるとハマスとなり、これはアラビア語で「熱情」を意味します。
ハマスの設立憲章の中には、「イスラエルは、イスラムがそれを殲滅(せんめつ)する日まで存在し続ける」という表現があります。回りくどい言い方ですが、要するに組織としてイスラエル殲滅を目標にしているのです。また、パレスチナ問題を解決するための平和的な方策、国際会議などを拒否することも憲章に明記しています。まさに、武力でイスラエルを打倒し、パレスチナ国家を樹立することを目指しているのです。
ハマスは、政治部門と軍事部門に分かれています。政治部門は、パレスチナの貧困層のための慈善事業や医療援助、学校建設などに地道に取り組み、民衆の根強い支持を得ています。特にファタハの腐敗を強く批判し、クリーンなイメージを持たれています。今回の選挙でハマスが躍進したのも、ファタハの腐敗を厳しく批判したことが民衆から支持されたものと見られています。
一方の軍事部門はテロ部隊です。イスラエルに対する自爆テロ攻撃を繰り返してきました。テロを起こすたびにイスラエル軍の反撃を受けるため、軍事部門の指導部はシリアに逃れ、シリアから指示を下しています。
また、反イスラエルの立場をとるイランが、ハマスを全面的に支援し、莫大な資金援助を与えています。
ハマス躍進で中東和平はどうなるのか
このハマスを、アメリカは「テロ組織」と認定しています。「テロ組織とは交渉しない」というのが、アメリカの立場。ハマスがパレスチナ自治政府を掌握した場合、アメリカは、自治政府に対する援助をストップする方針です。EUもこの方針なので、外国の援助に頼ってきた自治政府は、職員の給料も払えないような状態になりそうです。アメリカの2006年度のパレスチナ援助は2億3400万ドルですから、日本円にすると、ざっと273億円。これだけの資金が途絶えたら、大打撃です。
一方……
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