たぐいまれなる美麗なルックスと卓越したテクニック。カリスマティック・クロスオーヴァー・ピアニスト、マキシム。あのボンドやヴァネッサ・メイを世に送り出し、「クラシカル・クロスオーヴァー」という新たなミュージック・シーンを確立したメル・ブッシュが5年がかりで発掘。世界が注目する彼のデビュー・アルバム『ザ・ピアノ・プレイヤー』が6月25日、世界に先駆けて日本で発売されました。これに先行して開催された日本初ライブ。マキシムワールドは、美しく胸ときめくものでした。
代々木体育館に程近い「SHIBUYA BOXX」。全員がスタンディングでも200人程度でいっぱいになるぐらいの会場は、業界関係者と一般のお客さま、それもほとんどが若い女性たちでぎっしり。グランドピアノとスクリーンが設置されたステージに、その人が現れるのを今か今かと待っています。MCの女性が「イケメン・ピアニスト、え、ちょっと古い?」と笑いを交えながらプロフィールを紹介し、プロモーション映像が流れると、ステージの両側から勢いよくスモークが。ついに、「鍵盤のプリンス、旋律のマジシャン」マキシムの登場です。
190センチメートルの長身、黒のタンクトップが伸びやかな腕を際立たせ、右手首には黒い皮のブレスレット。ブランドは定かではないけれど、どことなくゴルチエ風の装いがよく似合い、まるでファッションモデルのようです。バック・トラックの演奏のスタートを目で合図した瞬間、猛スピードの「バンブル・ビー」が始まりました。バック・トラックとは、ピアノとは別に録音されたさまざまな楽器による演奏。もともとクラシック曲の「バンブル・ビー」が大胆にアレンジされ、ジャンルを超えた音色となって華麗に飛び回ります。
2曲目は、同名の映画より、「栄光への脱出」。壮大なドラマをそのまま再現したような演奏です。まったく無駄のない究極の美を放つ横顔には、時折、苦悩とも恍惚とも見て取れるような表情が浮かび、奏でるメロディーと呼応する……。今、目の前で起きていることが映画のワンシーンに見えてきました。うって変わって、甘く切ない旋律「クロディーヌ」。斜め上45度、中空を見上げながらうっとりした表情で演奏するマキシム。そこには天使の訪れが見えるのかもしれません、彼だけには特別に。
曲の合間に見せてくれるほほ笑みは、貴公子そのもの。前方に詰め掛けた女性たちからは終始、歓声が上がります。遠からずして、ピアノ界のベッカムさまになりそうな予感……。
4曲目「ダンス・オブ・バロネス」。同じクロアチア出身のフラーノ・パーラッツによるこの曲は、故郷の過酷な歴史を語るかのよう。そして、5曲目「ピアノ協奏曲イ短調(グリーク)」呼吸が止まりそうなハイテンション。まるで何かと闘っているような、そして、生きる情熱を鍵盤の一つ一つにぶつけて確認するかのようなピアノプレイ。1990年から始まったクロアチア戦争時、マキシムの住む町には毎日何千もの手榴弾が投げ込まれていた。そのような環境の中、音楽学校の地下室で「生きるのをやめることはできない。生き続けなくてはならない。自分を救う唯一の術はピアノなんだ」と、練習を続けたマキシムという人の存在そのものが、この演奏に込められているのではないでしょうか。
アンコールは、1曲目の「バンブル・ビー」をクラシック・ソロ・バージョンで。これはバック・トラックなし、ピアノのみ。その速いことといったら、人間の指が動くスピードとは思えない、「秒速」の世界。絶世の実力に圧倒され尽くしたライブでした。
最後に何かメッセージをと求められ、「わたしのメッセージは音楽の中にあります」と一言。マキシムの演奏を聴いた人は誰しも、このシンプルで力強い言葉に深くうなずくに違いありません。
<MAKSIM関連情報>
プロフィール
ホームページ
MAKSIMのフォトギャラリー、最新情報、来日レポートなどの情報が満載です。 現在MAKSIM WALLPAPER(壁紙) 無料ダウンロード中。
●MAKSIMデビュー・アルバム『ザ・ピアノ・プレイヤー』
2003/06/25発売
MAKSIM
TOCP-671520 2,500円(税込)
