12歳でプロデビュー以来、ヴァイオリン奏者として国内外で輝かしい成功を収め、テレビ出演に執筆にと多方面でご活躍の千住真理子さん。
運命的な出会いをしたという幻の名器「ストラディヴァリウス/デュランティ」とのファーストセッションを収録したアルバム『カンタービレ』が、2003年8月27日、リリースされました。
同日、CD発売を記念してプレスや関係者のために開催されたコンベンション。そこで初めて披露されたストラディヴァリウスの生の音色とは……。
モダンとクラシカルが融合した気品ある空間、「HAKUJU
HALL」。MCを務めるフリーアナウンサー八塩圭子さんの紹介を受け、優雅な白いドレスをまとった千住真理子さんが登場しました。
その腕にしっかりと抱いているのは、300年の眠りから目覚めたばかりの名器「ストラディヴァリウス/デュランティ」。一見して、滑らかで、しかも引き締まった曲線が美しく、品格を感じさせるヴァイオリンです。
息をひそめて最初の音を待つ観客。静寂の中に現れたそれは、はっとするほど繊細でつややかな音色でした。曲は、ヘンデルの「ラルゴ(オンブラ・マイ・フ)」。誰しも幾度か耳にしたことのあるメロディーです。
微粒子が踊っているかのように、細やかな音の流れ。しなやかで精緻な演奏。うっとりと聴きほれてしまいます。時に哀愁をたたえ、時に軽やかに。千住真理子さんによって封印を解き放たれたヴァイオリンが、歓びにふるえながらうたっています。
「このストラディヴァリウス/デュランティは、ローマ法王のために製作され、その後300年間、一度も弾かれたことはなかったんです。でも、それを感じさせないほど流ちょうに高鳴ります。弾いているとつややかで、伸びがあり、流動的で、まるでイキモノと対話しているような感じがします。世界中でさまざまなストラディヴァリウスを演奏したことはあったけれど、デュランティは他のどれとも違う想像をはるかに超えた存在。この感動を一人でも多くの方に届けたくて、世界中で愛されている名曲を選んで収録しました」と、静かな口調の中に秘められた情熱を感じさせる千住真理子さん。
3曲目は、実兄である千住明さんが作曲した「君を信じて」。NHK連続テレビ小説「ほんまもん」のテーマ曲として、耳に残っている方も多いのではないでしょうか。その明るく伸びやかな旋律を、ヴァイオリンと一体になって奏でる。
弾くというより語りかけるように。うれし気に応える「ストラディヴァリウス/デュランティ」。歳月を越えて、二人の芸術家が共演している。そんなふうにも思えるパフォーマンスでした。
そして、「ボランティアでホスピスを訪れるとこの曲をよくリクエストされます。心の中にある良い思い出を喚起する曲なのかもしれませんね。リクエストしてくださった患者さんたちのことを考えると、とても切ない思いがします」と紹介されたラストの曲は、エルガーの「愛のあいさつ」。現在、日本テレビ系全国ネットでオンエア中の水曜ドラマ「幸福の王子」で劇中曲として使われています。
気持ちをやわらかく包み込んでくれるようなメロディー、はかなく美しく輝く音色……。ほんのひととき、幸せの風景が立ち現れました。
「デュランティとの出会いで、わたしはまたゼロからの出発点に立った。今まで演奏してきたすべての音楽はないに等しい。 これからがわたしの本当の音楽人生なのかもしれない」と言う千住真理子さん。
最高のパートナーとの新たな旅は、今始まったばかりです。
●『カンタービレ<歌うように>』
2003/08/27 発売
TOCE-55580
2,800円(税込)
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