「変わることはいいことだ」
藤田正美(ふじた・まさよし)
『ニューズウィーク日本版』編集主幹
2001年4月28日
とうとう自民党でも「異変」が起こりました。「構造改革なくして景気回復なし」とか「派閥政治の脱却」をめざす小泉純一郎元厚生大臣が、派閥の数の論理を超えて自民党総裁、そして日本の首相になったのです。
小泉首相を誕生させたのは、自民党の「地方予備選」でした。ここで圧倒的な勝利を収めたことで、国会議員も小泉旋風を無視できなくなったわけです。自民党内部とはいえ、「民意」としてははっきりと旧体制的な派閥の論理にノーをつきつけたわけです。
これで小泉さんが、八方ふさがりに見える日本の政治を本当に変えることができるのかどうか。これは誰にもわかりません。しかし「変える」といって当選した以上、実績を残さなければ、自民党の傷はますます深くなるばかり。その意味で、自民党は大きな賭をしたことになります。
もちろん野党も、小泉改革にどう反応するかで、野党としての存在理由を問われることになります。少なくともこれまでの守旧派自民党に改革派野党というような構図は通用しなくなるでしょう。
しかし最も問われるのはおそらく国民です。改革には一時的な痛みも伴うと小泉首相は主張してきました。この痛みを国民が本当に耐えるのか、それともやっぱり痛いのは嫌なのか、今年末にかけて国民が選択を迫られる場面があります。自民党政治を評論家的に冷笑することができなくなったとき、私たちは私たちの責任において政治的な決断をしなければなりません。さて私たちに「解国的出直し」をする勇気はあるのでしょうか。