「山高ければ・・・」
藤田正美(ふじた・まさよし)
『ニューズウィーク日本版』編集主幹
2001年5月5日
小泉新総理の支持率が、調査機関によって違いますが、何と80%前後にも達しています。細川内閣のときを上回る「ブーム」というか「フィーバー」というか。森内閣のときにあれだけ低迷していた株価も、ずいぶん持ち直してきています。
たしかに政治をなんとかしてほしいという国民の期待を一身に背負って誕生した政権ですから、この一種の高揚感は理解できます。ある調査によれば、共産党支持者の半分が小泉さんを支持しているとか。でも実際に小泉さんにどこまで日本を変えていける力があるのか、最近の言動を見ているとちょっと不安です。
首相公選に絞っての憲法改正論議、というのはわかります。国民から離れてしまって永田町の論理一色になってしまった政治を変えるには、首相を有権者が直接投票で選ぶ公選制はひとつの手段であると思います。永田町の論理では首相になれなかったはずの小泉さんが、首相公選を言い出すのはある意味で当然かもしれません。
しかし参院選に向けて、「環境重視、男と女が仕事や家事に共生できる社会」と言い出したのには驚きました。もともと小泉さんが自民党総裁に選ばれたのは、「構造改革なくして景気回復なし」と大見得をきったからでしょう。そうであれば、この参院選で小泉改革の具体策を打ち出さなければならないはずです。それが「環境重視、男女共同参画」というのでは、アレレッ、です。
もちろん環境重視が悪いといっているのではありません。でもいま喫緊の課題となっている構造改革はどこへ行ってしまったのでしょうか。あんまりピントを外していると、小泉ブームもいきなりしぼんでしまうかもしれません。とくに出だしがあまりに高いと、落ちるときも加速度がつきます。株の世界でもよく言うじゃありませんか。「山高ければ谷深し」ってね、小泉さん。