「国会は面白くなったけど・・・」
藤田正美(ふじた・まさよし)
『ニューズウィーク日本版』編集主幹
2001年5月19日
今、国会中継が面白い。官僚が書いた作文を棒読みするだけで、面白みという言葉とはまったく無縁だった国会論戦が、小泉純一郎首相の登場で変わってきた。田中真紀子外相の答弁も見ていてハラハラするが、少なくとも筋書きのないドラマを見ているような気がする。
日本の政治や経済、社会を変えるといって華々しいスタートを切った小泉内閣には、自民党支持者だけでなく国民の実に80%近い人たちがエールを送っている。実際にどれだけ改革できるかどうかはともかく、国会審議を変えたことは評価したい。
でも、と天の邪鬼の私は考える。国民の5人に4人が支持するなんて気持ち悪くないか?森さんのときは実に支持率はひとけた。政治信条を共にする同じ自民党なのに、10倍もの支持率に化けるのは、どういうことなのだろう。
政策が違うのだろうか。しかし森さんのときの政策と小泉さんの政策は、大筋で別に異なるわけではない。ということは、要するに国民の「ムード」、はっきり言ってしまえば気分の問題なのか。そしてメディアがその歓迎ムードをあおっているのだろうか?
だとすれば改革がなかなか進まないということがわかったとき、国民の支持は一気に急降下して、政治に対する「閉塞感」はますます強まることになりかねない。本当は「小泉改革」を進めるためには、政治のリーダーシップだけではなく、国民の覚悟と持続力こそが必要だ。つまり小泉さんでもし満足できなければ、次のリーダーを担ぎ出すぐらいの心構えが要求されている。国会で問われているのは、有権者の意識そのものだ・・・・テレビを見ながら、こんなことを考えた。