女性天皇を国民投票で
藤田正美(ふじた・まさよし)
『ニューズウィーク日本版』編集主幹
2001年12月8日
皇太子ご夫妻に待望の赤ちゃんが誕生しました。名前は「愛子」、称号は「敬宮」と決まりました。何はともあれおめでたいことです。「何はともあれ」と書いたのは、実は待望されていたのは「男の子」であったからです。皆さんご承知のように、皇室のあり方を定めた皇室典範では、皇位を継承できるのは男の子と決まっているため、このままではやがて皇位を継承できる人がいなくなるという問題が議論されていました。
そこで出ているのが、皇室典範第1条にある「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」という規定を変えようという案です。男子でなくても女子でもいいのではないか、ということです。日本の歴史には、6世紀の推古天皇から始まって10回にわたって女性が天皇となりました。明治時代に制定された旧皇室典範によって「男子」という規定が盛り込まれたわけで、男子が皇位を継承するという「伝統」はたかだか百数十年にすぎません。
世界的にも女帝は珍しいものではありません。実際に現在のイギリスでは女王です。もちろん現在は皇太子がおられるわけですから、急いで皇室典範を改正しなければならないという話ではありません。小泉首相がやや慎重な発言をしているのはそのためです。
典範を変えるにしても変えないにしても、このような議論はできるだけオープンにするべきだと思います。何といっても、日本国憲法第1条には、「天皇は、日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」と書いてあるからです。
こうした規定があるのは、それまでの大日本帝国憲法(明治22年発布)における「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」という天皇の絶対的あるいは神格的存在を変えようとしたからでした。戦後に昭和天皇が「人間宣言」をしたのも、そのような新しい象徴的存在としての天皇を明確にする目的があったといえます。
しかしいかなる形であれ、日本国民が天皇や皇室について「総意」を表明したことは歴史上ないのです。この皇室典範改正問題をオープンに議論し、そして場合によっては「国民投票」を実施して、女性天皇を認めるかどうかを決めてもいいと思うのです。それが、国民の中にも自分たちの「総意」に基いて皇室が存在するのだという意識をはっきり植えつけるだろうし、その結果、皇室に対する尊敬の念も、また今とは違うより身近なものになるのではないかと思うからです。
私自身は女性天皇でもいいと思います。さらに女性天皇が一般の人と結婚して生まれた子供が天皇になってもいいのではないかと思います(日本の歴史ではこの例はありませんから、ここは反対論が多いでしょう)。さて、皆さんは国民投票をしたいと思いますか、それとも国民投票なんてとんでもないと思いますか。