……一般の銀行は日銀から資金を安く借りられるので、その資金を一般企業に貸し出す際の金利も低くなり、企業は資金を借りやすくなります。借りた資金で工場を新設し、従業員を新たに雇用すれば、景気回復に役立つ、という構図です。日銀は、公定歩合を上下させて、景気もコントロールしようとしているのです。
「ゼロ金利政策」が行き詰まったので
しかし、バブル崩壊後、長引く不況を何とかしようと、日銀は公定歩合の引き下げを続けてきた結果、とうとう公定歩合はほぼゼロに近づきました。実質上ゼロ金利状態になっています。でも、金利はゼロより下げられませんね。このため、金利を通じた景気のコントロールができなくなってしまったのです。
そこで考えられたのが、量的緩和です。金利の調節ではなく、資金の量の調節に踏み切ったのです。具体的には、各銀行が日銀に持っている当座預金の口座に、日銀が資金をジャブジャブと提供するという形です。「資金提供の制限を緩和して量を増やす」ので、量的緩和というのです。
では、どうやって、資金をジャブジャブ提供するのでしょうか。
日銀は、こうして資金を供給する
企業間の取引では、現金取引というのは、ほとんどありませんね。商品の売買が行われると、支払いは通常、手形です。たとえば「6か月後に○○万円を支払います」という約束手形を発行するのです。手形を受け取った企業にも資金のやり繰りの都合がありますから、手形を手元に持ったままにはしておきません。それを取引先の銀行に持ち込んで、現金に替えてもらいます。このとき銀行は、「手形は6か月後に現金になるから、それまでの間の利子分を差し引いた金額を払います」ということになります。銀行が手形を受け取り、手形の額面より割り引いた金額を払ってくれるのです。これが「手形の割引」です。
こうして、各銀行には、手形が大量に保管されています。あるいは、企業が発行した借金証書である社債も大量に持っています。最近では国債も大量に保有しています。
日銀は、こうした手形や社債、国債を、銀行から大量に買い上げるのです。買ったお金は、日銀内の各銀行の当座預金口座に振り込みます。各銀行が、その口座から現金を引き出せば、日銀から紙幣を受け取りますね。このとき、日銀は紙幣を発行したことになるのです。これが、量的緩和政策の具体的な中身です。
当座預金残高を積み上げた
日銀内の各銀行の当座預金残高は、通常は合計で5兆円です。最低でもその金額は維持することを求められています。これが法定準備金です。各銀行は、法定準備金に少し余裕をもたせているので、6兆円程度が預けられてきました。それを、日銀は、量的緩和によって、なんと……