<3ページ目からの続き>
……自民党の有力政治家たちは、地方選出。地方は、景気のいい愛知県を除き、まだまだ景気回復の見通しが立っていません。そういう選挙区から選出された政治家にしてみれば、「景気回復に水を差すようなことはやめてくれ」と言いたくなります。
経済界は円高を心配している
経済界にも、量的緩和解除の方針を心配している人たちがいます。主に輸出産業の人たちです。
量的緩和を解除すると、海外の投資家は、「日銀は金融引締めに転じるのだな」と受け止めます。量的緩和を解除しても、実際には大した変化はないのですが、海外の投資家には、そんな細かいところまでわかりません。投資家の多数が「日銀が金融緩和の方針を撤回する」と受け止めていれば、判断は間違っていても、世の中は、そちらへ動きます。これを業界では「マーケットが間違う」と表現します。マーケットつまり投資家の判断が間違うことがあるのですが、間違いに気づいた投資家だって、「マーケットが間違っている」と言っているうちに損をしてしまいますから、間違いを承知で大勢につきます。結果、マーケットが間違った方向に大きく動くことがあるのです。
海外の投資家が、「日銀は金融引き締めに入る」と判断してしまう以上、次には、このような判断をします。「これまでは日本で資金を低利で借り、その資金をドルに替えてアメリカで投資してきた業者が多かったから円安になってきた。これから日本の金利が上昇すると、日本の円をドルに替える動きがストップする。これからは円安に歯止めがかかり、むしろ円高に動くだろう」。
こう判断すれば、多くの投資家が円高を予想有して、円高になる前にドルを円に替えてもうけようとしますから、結局、円高が進みます。
円高が進むと、輸出商品は海外での価格が上昇しますね。海外で商品が売れなくなる心配があり、なるべく日本国内の金利が上昇しないことを望むのです。
政府は財政赤字拡大を心配している
また、財務省は、財政赤字拡大を恐れています。日銀が量的緩和を解除すると、マーケットには、「日銀が金融引締めに方針転換した」と受け取られます。その結果、金利が上昇に転じます。別に日銀は金利を引き上げるつもりはないのですが、マーケットが勝手にそう判断してしまえば、実際に金利は上昇します。
いまの日本の国家財政は大変な赤字。膨大な国債を発行していることは、ご承知の通りです。これまでは金利がほぼゼロだったので、国債の金利も低くてすみました。しかし、金利が上昇すると、国債の金利も高くなり、政府としては、金利の支払いに追われることになります。財政赤字が、雪だるま式に拡大する恐れがあるのです。
財政再建をめざす財務省としては、いちばん避けたいシナリオです。
かくて、日銀包囲網が形成されようとしているのです。
こうなると、日銀は、「中央銀行の独立性」を守らなければならないという使命感・意地が出てきます。日銀は、どう動くのか。来年2006年は、春に向けて、このニュースがたびたび登場するはずです。そのとき、このコラムのことを思い出してください。
今年のコラムは、ここまでです。次のコラム連載再開は、新年の1月10日からです。みなさま、どうぞ、よいお年をおとりください、じゃなかった、よいお年をお迎えください。
|