記者の「証言拒否」は認められるか
3月14日と17日、東京地方裁判所と東京高等裁判所で、対照的な判断が示されました。「裁判で記者に証言拒否は認められるか」という点に関してです。
今回は、この問題を取り上げます。
「職業上の秘密」は証言を拒否できる
あなたが裁判で証言を求められたとしましょう。証言でウソをつくことはもちろん認められませんね。また、正当な理由なく証言を拒否することも認められません。言いたくないから、という程度の理由では証言を拒否できないのです。正当な理由がなく拒否したと裁判所から判断されれば、罪に問われます。罰金を科せられたり、拘束されたりします。
では、「正当な理由」とは、なんでしょうか。これは、「職業上の秘密」に当たる場合なのです。民事訴訟法という法律で、「職業の秘密に関する事項についての尋問には証言を拒否できる」と規定されています。
たとえば医師は、担当の患者の容体やプライバシーに関して、裁判で証言を求められても拒否できます。「医師が裁判所で自分に不利になることをしゃべってしまう」と思ったら、患者は医師に正直に話すことができなくなりますね。それでは、治療に支障が出るからです。
あるいは弁護士は、依頼人に関して、裁判で証言を拒否できます。被告が弁護士に相談した内容を、弁護士がそのまま裁判でしゃべってしまったのでは、被告は弁護士を信用できなくなります。被告が弁護士に正直に話をしなくなったら、弁護活動にも支障を来すからです。
こうした理由で、「職業上の秘密」に関しては、証言を拒否できることになっているのです。
さて、では、記者にも「職業上の秘密」があるのでしょうか……
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