カタカナの商品名(2003年5月15日)
出張勝也(でばり・かつや)
株式会社オデッセイ コミュニケーションズ代表取締役社長
世の中には、いろいろと面白い商売の人がいます。たとえば、企業の社名から始まって、商品やサービスの名前を考えることで、たくさんお金を稼いでいる人などです。ネーミングに関しては、乏しい知恵を出さないといけない場面が僕にも何度かあり、その際、カタカナの扱いが考えどころになりました。
一つ目は、自分の会社の名前。まず社名の前半分の「オデッセイ」は、ギリシアのホメロスの作品名から来ています。「オデッセイ」は、トロイを攻略したイタカの王オデッセウスが、10年にわたる苦難の旅の末、ようやく故郷に帰り着くという大叙事詩ですが、旅が好きな僕は、「人生そのものが旅だから」ということで、この名前を勝手に拝借することにしました。でも、同じように「人生は旅だ」ということを何度も書いた日本の松尾芭蕉にちなんで、「株式会社奥の細道」とか「株式会社芭蕉」とはしませんでした(ちなみに社名の後半の「コミュニケーションズ」は、コミュニケーションに関わる仕事をやっていきたいということで付けました)。
ペットの名前を考えた際にも、カタカナの扱いで悩みました。4年前、カイ(この前書いた我が家のメスの甲斐犬)をもらって来たとき、「小梅」や「サクラ」といった日本風の名前から、「スージー」といった横文字の名前までが候補にあがりました。あまりオーソドックスな日本犬の名前を付けることには躊躇し、ただ和風の顔をしたこの犬に「スージー」でもなかろうと、結局カタカナの「カイ」になりました(その後、「甲斐」あるいは「カイ」と、同様の名前を付けられた甲斐犬が多いことを知り、我が家の凡庸さを再確認しましたが……)。
この二つの例にもあるように、カタカナをどの程度使ったらいいのか、ネーミングの際に考えてしまうことが多いのではないでしょうか?
僕の会社の商品で、英語をそのままカタカナにして使っているものがあります。昨年から始めたIC3(Internet and Computer Core Certificationの略)という試験ですが、3科目からなり、それぞれ「リビング・オンライン」(Living Online) 、「キー・アプリケーションズ」(Key Applications)、「コンピューティング・ファンダメンタル」(Computing Fundamental)と、英語の商品名をそのままカタカナにしてご提供しています(一部のお客さんから、カタカナだとどんな試験か分かりにくいというコメントをいただいたこともあります)。
商品やサービスの名前は、売上げを伸ばしていくためにも、非常に重要なポイントです。英語をカタカナにしたままの商品名がいい場合と、日本風に直した方がいい場合と、それぞれケース・バイ・ケースでしょう。僕の会社のように、海外の取引先から提供される商品やサービスを日本国内で販売していくときには、その商品のグローバル性をどの程度アピールしていけばいいのかが、重要な要素のひとつになると考えています。
以前からよく言われていることですが、日本車の名前はほとんどが横文字をカタカナにしたもので、日本語から来ている名前はこれまでほんの一つか二つあっただけです。(たとえば、かつて、いすずから出ていたASKA=飛鳥。なぜ自動車の名前はカタカナでないといけないのか?
逃げるようですが、ネーミングの話はひとつの日本文化論が成立するほどおもしろいもので、この短い拙文で結論的なことを書くことは、到底できません。