■中谷彰宏 さん
こんにちは。中谷彰宏です。サーベイキャスターを務めるのって、これ、結構大変なことなんですよ。まとめて原稿書いてるわけじゃなくて、1週間、毎日が締切日ですからね。みなさんからの投稿が、イー・ウーマンからだいたい夕方くらいにメールで届くんですよ。で、そのメールに「翌朝の8時までにコメントを執筆して送ってください」って書いてあるんですね。「朝の8時まで」って……、だいたい夕方は出かけますからね。どこか地方にいたりすることもあって。そういうときは、ホテルで、今はめったにない、手書きで原稿を書いて送ったりしてね。この緊迫感がね、なんとも言えないんだけれど「ああ、なんで、この出張の多い時に、受けてしまったんだろう」って思ったり(笑)。
でもね、みんな一生懸命、投稿を書いてきてくれているというのは、すごく分かるんですね。僕、関西人なんですけど、関西人っていうのはなんかこう、空き時間がありますとですね、お題を出してみんなで話し合うっていう習慣があって。たとえば、落語の「三十石船」で、京都から大阪まで下る川の船の中で、知らない人同士が乗り合わせたときに、みんなが「せっかくですから、退屈しのぎに何かお題を出して、みんなで語り合いましょう」っていうような。
これがね、今の若い人でもね、お題を出して、すぐ「おう、おもしろい」って言って乗っていけるっていうのが、コミュニケーションとしてすごくおもしろいことなんですね。そういうことがないとね、どういうことが起こるかって言うと、愚痴、悪口、噂話になっていくんですね。でも、それじゃあなんの生産性もなくて、自分が凹んでいくばっかりになる。それよりは、何かお題を出した時に、それに乗っていけるっていうことが大事でね。
ここに来られている方っていうのは、何かお題を出した時にね、「ああ、そう言えば」って自分のことを振り返って、「そんなことは考えたことがなかったけれども、こういうことなら、思い当たることがありますね」って、自分自身の経験を思い当たるっていう……これ、「思い当たり力」って言うんですけど。この思い当たるっていうことがすごく大事なんですね。
お題を出しても、「いや、特にありません」とか「普通」とか「別に」とか、そういう返事を返してこられると、せっかく出したお題がね……。最初は「特にないかな」と思っても、もう一歩ちょっと踏み込んで、「そう言えば、こんなことがあるかな?」って。「特にないかな」と思っても、もうちょっと考えたら、必ず思い当たるところっていうのがあるはずなんですね。だから、「普通」、「特にありません」、「別に」みたいなことを言おうとした時に、思い当たってみることができたら、こんなおもしろいことはないですよ。
これ、お題を出している人と、投稿を送ってきた人の差は、まったくないんですよ。区別つかないんです。それがいいんですよ。同じ船に乗り合わせたみたいなもんですからね。世の中で、今、なにか事件が起こったら、その事件の話ばっかりみんなでしがちですけれども、そうじゃないことをみんなで話し合えればいいな、というふうに思います。これからもよろしくお願いいたします。ありがとうございました。 |