ホーム> career & management > 国境を越えた足跡> 第3回 久保純子さん


第3回 久保純子さん
11/11
なりたくない自分にはなりようがない。だからならない。 |
進藤 |
これまで、たくさんの女性の生き方を見てこられたと思いますが、理想というか、目標の女性像というと。 |
久保 |
日本語で言うとちょっといやらしいんだけど、「いつも輝いていたい」。その年その年で、仕事でもなんでも精一杯、いろんなことをしていたい。必ず前進していたい。誰かのようになりたいというのではなくて、自分が一番良い状態で、嫌なこともいっぱいあるのだけど、そういうこと以上に今ハッピーだと感じていられる状態でいたいと思う。
|
進藤 |
そのために大事なことって何だろう? |
久保 |
前向き。過去の嫌なことは忘れて、とにかく先の良いことを考えて前進していく。嫌なことはあって当たり前! 嫌なことがあれば、良いことがさらに良く感じられるでしょ!
|
進藤 |
一番影響をうけた女性は。 |
久保 |
母かな。母と祖母。祖母は母と正反対で、家の中で夫の帰りを待ち、洋裁、主婦業を全て完璧にこなすというタイプの人だった。それもすてきな生き方だなと思った。その反対で母は仕事を二十四時間していたい人。そういう生き方もまたいいなって。足して二で割ったぐらいで生きられればいい。
|
進藤 |
では反対に、こういう生き方だけはしたくない、なりたくない、というのは? |
久保 |
なりたくない……。なりようがないから、なりたくない自分を想像できないな。なりたくない自分になりたくないから、ならない。だからわからない。想像がつかない。難しいな。
でも、人のせいにはしたくない。例えば「子どもがいるから家にいなくてはならない」とは言いたくない。「子どもがいるから家にいられる」と言いたい。「主人のご飯を作るの面倒くさい」と思うのではなくて、「主人がいるから自分もきちんと作って食べられる」と思いたい。
|
進藤 |
いいね。幸福のヒケツかもしれないね。自然にそう思うんだ。 |
久保 |
そう思うようにしているし、そう思いたいし、自然にそう思ったほうが健康。何でもかんでも、何かのせいにしようと思えば、何のせいにでもできる。マイナスに考えていれば何でもマイナスに考えられるから。
|
進藤 |
では最後に。サイトをご覧の方たちにメッセージをお願いします。自分の生き方を模索している人、いま目標に向かって走っている人、いろいろいらっしゃると思いますが。
|
久保 |
「楽しいことしましょう!」 何でもスタートは人。本を書いているのも人だし、テレビの情報も人から発信されているし。全て人が起点になっているのだから、とにかく人との「出会い」を模索していけば、いろいろな可能性が出てくると思う。だからどんどん外に出ましょう。いい季節だし。出会いを大切にして。こういうインタビューも出会いだし。すごいなあと思います。
|
対談を終えて
「出産後、周囲のみんなが優しくて……」。この言葉を実感したのは、インタビュー中のことでした。1時間半もの間、泣き声ひとつあげずスヤスヤ眠っていたベビーちゃんが、少しクスンクスンと泣きはじめ、あわてて抱え挙げたときのこと。ふと視線をやった向かい側のビルのベランダから、タバコを一服していたおじいちゃんが、ベビーに手を振っているではありませんか。その、なんともいえない穏やかな表情。このやさしい光景に、こちらまで、あたたかいものが胸に広がりました。見知らぬ人たちが我が子に向ける優しい眼差し。「そうなの、こういうことなの」とニッコリする純ちゃん。大きなカバンからは、哺乳瓶やオモチャ、オシメが、次々ととび出します。
メモ帳片手にスタジアムを掛けまわっていたあの頃と、一見なにも変わらないのに、愛娘に向けられる慈愛に満ちた表情からは、母の大きさのようなものを感じました。
かたや、一体どこに向かっていけばいいのか。ただ漫然と日々をすごしているようで、ここのところ焦りにも似た精神状態だった私。ふと、そんな話になると「いいじゃない。きっと、今はまどろまなきゃいけない時期なのよ。その先に、いろんなことがでてくるよ」と。純ちゃんにそう言われると、急に道がひらけたような気持ちになるから、不思議なものです。
すべてをまるごと受け止める柔軟さと感受性の豊かさ。その中から、自分にとって大切なモノを見極める、判断力。どんどん拡がっている豊かさに、なぜか嬉しくなってしまうわたしでした。
この先、わたしにとっての結婚、出産という節目はいつになるやら見当もつきませんが……こんな先輩がいてくれることは、本当に心強いかぎりなのです。
|
|
11/11
|