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第4回 カオリ・ナラ・ターナーさん
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落ち込むヒマなんかない |
進藤 |
ターナーさんがご主人と同じメイクアップの道に進まれたのは、ケガでダンスをあきらめなければならなかったからだとうかがいました。それは相当なショックだったでしょうね。 |
カオリ |
そうね。落ち込みというより、「どうしよう、もう踊れない」ということの悲しさのほうが大きかった。 |
進藤 |
当時、どんなふうに? |
カオリ |
うーん、そうかといって、みんなみたいに暗い顔してたわけじゃなかった。「日本舞踊はできるかな」とも思ったし。 |
進藤 |
まだ何かができるかなって探してらした?
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カオリ |
そう。スパニッシュダンス好きだったから、カスタネット教えられるかな、とか。
あのとき手術という手段もあったんだけど、「もういいよ」と思ったの。6歳から踊って、ラスベガスに出て、白人ダンサーをバックにしてやったよ、と思ったから。手術してまで踊らなくていいと。 |
進藤 |
すぐにあきらめが? |
カオリ |
うん。そのへんはわりとさっぱりしてるから。 |
進藤 |
ショックでしばらく動けないとか。スポーツ選手にお話をうかがうとそうおっしゃる方が多くて。「3日間ぐらい動けない」とか。 |
カオリ |
足が痛くて動けなかったけど(笑)。 |
進藤 |
アハハハ。気持ちが沈みはしなかったんだ。 |
カオリ |
うん。 |
進藤 |
そうはいっても、一般的には、そこでウジャウジャ悩んでしまいがちだと思うんですが。 |
カオリ |
もし、まだ目標の中間点だったら悩んだかもしれないけど、やるだけやったから、もういいと。これ以上やったって、二番手三番手で出るんならイヤだ、一番でいられないんなら、やらないほうがいいって。 |
進藤 |
やることはやった、という達成感があったんですね。ふむふむ。それにしてもターナーさん、あまり落ち込んだりすることって、ないんですか? |
カオリ |
主人が亡くなったとき、一年目ぐらいにわーって泣いたことありますけどね。それでもひとしきり泣いたら収まった。それ以外は落ち込むってないですね。落ち込むヒマがないというか。 |
進藤 |
常に前向きでいらっしゃる。 |
カオリ |
くよくよしたってしょうがないじゃない。先行かなきゃ。「悲しい」って思っても誰かが慰めてくれるわけじゃないし、自分しかない。 |
進藤 |
そういう生き方、ターナーさんやっぱりアメリカ向きなんでしょうか? |
カオリ |
そうですね。たとえば踊りの世界で泣くとするでしょ。そうすると、日本だったら、「どうした、こうした、あの人泣いてるわよ」って騒ぐじゃない。そして、「彼氏とケンカして」なんて言うと、「あんな彼氏やめなさい」とか「大変ね」って言うけど、最後は帰っちゃうでしょう。
アメリカ人の場合は、みんな、泣いてるのを知らないフリなの。でもその人が“I need help”って言うと、「どうしたの」って来て、「ああそうかそうか、じゃあ私いい弁護士知ってる。今晩はウチに泊まんなさい。よく考えて明日別れる気持ちが変わらないんだったら弁護士紹介してあげる」ってなる。ただ、「かわいそうかわいそう」って傷をなめるようなことはしない。
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進藤 |
本当の優しさとは、という話ですね。 |
カオリ |
アメリカ人は、「別れるのはあなたよ、本当にその気になったらウチに泊まんなさい」ってサジェスチョンはする。日本人は「あらあら」って言うだけで、結論のときに「バーイ」でしょ。その違いがわかったんです。最初ね、アメリカ人って冷たいなって思ったけど、そうじゃなくて、ベタベタしないだけなんですよ。
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