これからが改革の正念場
藤田正美(ふじた・まさよし)
『ニューズウィーク日本版』編集主幹
2001年8月4日
先週で外務省の乱脈ぶりの背景にはいわゆる庶民の「妬み」があるのではないかと書いたら、多くの方から反論をいただきました。その一部はこのページでも紹介されると思います。僕の言いたいことは、庶民という言葉で判断基準を正当化してしまうようなメディアの在り方は危険だということでした。読者のみなさんの反論や意見はとても楽しみだし、参考になります。これからもよろしくお願いします。
さて参議院選挙ですが、予想どおり自民党の勝利ということになりました。でもこれは自民党が勝ったのではなくて、小泉首相が勝ったのです。つまり有権者は、小泉改革を支持するから、自民党に投票せざるをえなかったのだと思います。
だからこそ日本にとってここからが正念場になります。政権党にとって政策を実現する手段は、予算の編成ですから、来年度予算についての攻防が始まるこの夏からいわゆる改革派と守旧派のせめぎ合いになるわけです。
興味深いのは、これが政党同士の争いではなく、党内の争いになることです。しかも自民党そのものが分裂の危機に瀕するようなものに発展する可能性すらあります。なぜなら、小泉首相の掲げる「聖域なき構造改革」が、自民党の権力基盤そのものを脅かす改革になることが目に見えているからです。
小泉首相の街頭演説で「小泉を支える自民党」と言っていましたが、これはある意味で矛盾した言い方なのです。改革を進めることが自民党を解体することにつながるとしたら、果たして自民党議員は首相を支持するんでしょうか。
今回の選挙でも、特定郵便局をバックに出てきた議員が、早々と当選を決めました。この特定郵便局はそれこそ小泉改革の標的なのです。改革という追い風を受けて、旧来型組織を背景にした自民党議員が誕生してくる構図に、何とも不思議な思いがします。それでも有権者が改革を支持しているわけですから、ここは徹底的にやらねばなりません。国民の閉塞感を打開する道はそこにしかないのです。そこで将来が開けるかどうか、ある程度の結論は年内にも出ます。