病院の格付けが欲しい
藤田正美(ふじた・まさよし)
『ニューズウィーク日本版』編集主幹
2001年12月15日
医療改革の大筋が決まりました。サラリーマン本人の負担を「必要なとき」(具体的にはおそらく2003年度)に3割とすることになるのでしょう。何と言っても年間の医療費が30兆円を超え、さらに増える見通しにあるとすれば、ある程度の「受益者負担」はやむを得ないと思います。
たまたま私の両親が具合を悪くして入院しました。老人ですから、医療費についてはかなり手厚くなっています(それでも昔よりは本人負担が増えているのですが)。入院とか転院の手続きを繰り返しているうち、大きな疑問がわいてきました。
それは医療の質の問題です。医療の質についてはいろいろな場面で話題にはなっていますが、実際に体験してみるとびっくりするぐらい質の差があります。
医師の質については、昔から「藪医者」という言葉があるように、いつの時代でも問題だったのでしょう。もちろん現代でも藪医者はいます。「誤診」などというのはいわば日常茶飯事でしょうが、患者はその誤診によって取り返しのつかない状況に追い込まれることがあります。
それに医師の問題だけではありません。治療と並行して看護の質も問われます。一刻を争うような病気だけではなく、怪我や慢性病などの場合、看護が占める比重は非常に高くなります。その看護の質は、患者にとって時には命取りになることもあります。たとえば患者の取り違え事件などは、結局はこの看護の質が低いから起きるといっても過言ではないでしょう。
いちばん問題なのは、実はこうした医療の質というものが、われわれ利用者には「うわさ」などでしか知りようがないということかもしれません。「あの病院に行ったら生きて出られない」などという口コミにどれだけ根拠があるかわからないし、評判のいい病院が評判どおりかどうかも知りようがありません。
診療報酬の引き下げが話題になるたびに、医師会側は「医療の質を保つ」ためと称して反対します。たしかにその論理も一理ありますが、すぐに治療できる病気をヘボ医師が誤った治療を施すことで病気が悪化したりすれば、治療期間が長引いて余計にお金がかかります。つまりヘボ医師ほど儲かる仕組みという側面もあるのです。
そこで提案なのですが、第三者機関による病院の格付けというのをやったらどうでしょうか。あの病院はトリプルAだとか、こちらはBマイナスとかつけるのです。もちろん病院の性格によって格付けは変わってくるでしょうから一概には言いにくいでしょうし、いったん低い格付けをつけられたら、患者が減って病院の経営が立ちゆかなくなるかもしれません。どんな病院でもないよりはあったほうがいいということも言えるので、なくなるのは大きな問題かもしれません。逆に高い格付けを得た病院は患者が増えて、緊急を要する入院患者を引き受けられないということも起こりえます。それでも患者からすれば、病院を選ぶ指標があるということは、かなり助かるのではないでしょうか。実際にどのような格付けをするのか、誰が判定するのか、これはむずかしい問題で、決してまとまりそうにはないのですが、やっぱり安心して患者を連れていける病院はどこかはどうしても知りたいのです。たまたま個人的にそういった経験をしたために、この問題が気になりました。皆さんはとうの昔にそう思っていらっしゃったかもしれません。ご意見を書いていただければ幸いです。