よい圧力、悪い圧力
藤田正美(ふじた・まさよし)
『ニューズウィーク日本版』編集主幹
2002年2月16日
田中真紀子外相の更迭騒動で、とにかく悪者になってしまったのが鈴木宗男議員でした。もし支持率の投票をしたら、限りなくゼロに近い数字になってしまうのではないでしょうか。一部の週刊誌はなぜ鈴木さんにあんな「力」があるのか、何をやったのか、いろいろ追っかけています。しかし議員の圧力をすべて悪いということはできないでしょう。議員はわれわれ有権者の代表であり、その議員が政策の決定に関与するのは当然です。多くの場合、政策案をつくるのは官僚ですが、最終的に国会がその法案を通すことによって政策が実行されるわけですから、国会こそ究極の圧力団体といえます。
NGO参加拒否問題は、どう考えても彼の考え方が正当だったとは思えないから問題なのです。たとえばスーパー林道を建設するというような問題で、どこかの議員が農水省なり国交省に圧力をかけて中止させたら、有権者はどう反応するのでしょう。自然保護派は喝采をおくるでしょうし、林道の利害関係者(たとえば地元の企業主など)は猛然と反発するかもしれません。
政治家の圧力を排除するなどと言ってしまうと、喜ぶのは官僚ばかり、ということにもなりかねません。問題は、圧力一般ではなく、その圧力が正当なのかどうかというところにあります。そして、それを誰が判断するのか、です。法律で定められていることは法律に従えばいいのですが、すべてが法律に書かれているわけではありません。
だから官僚の裁量や政治家の圧力がはびこるわけです。だったらすべての圧力を文書にして、それに対してどのように対応したかまで記録しておけばいいかもしれません。自分のかけた圧力が記録に残るとなれば、議員先生も、もう少し考えて物を言うようになるでしょう。明らかに記録に残るとやばい話はしなくなるでしょう。
自分の身内企業に受注させたりとか、地元に有利になるよう計らうとか、それらがなくなるだけでもずいぶん透明になると思います。どのような過程で物事が決まるにせよ、それが必ず公表されるようになれば、官僚もいい加減な判断はできなくなります。
たしかに現実的にはすべての議員の話を記録に残すことは不可能でしょう。農水省の狂牛病対応にしても、やはり一部議員の圧力があるとされています。そして、そのために国民は農水省に対して不信感を抱くことになりました。
第三者機関によって政策の評価を行い、不透明な部分は徹底的に解明するという方法もあるかもしれません。すべての行政についてこれを行うことはむずかしいですが、税金が一定以上支出されるものについてだけ、こうした機関を設けるというやり方もありそうです。そして不明朗な資金の流れがあったら、後は東京地検特捜部に捜査を依頼するということもありえます。
こういうことに関して、われわれ国民は政治家に徹底的に圧力をかけなければいけません。電話やメール、手紙、それがまずできることです。感情的にならず、冷静に判断し、自分がいいと考えるか悪いと考えるかを伝えるのです。何といっても、われわれ有権者こそ、日本で最大の圧力団体なのですから