民主党の混乱はひとごと?
藤田正美(ふじた・まさよし)
『ニューズウィーク日本版』編集主幹
2002年12月21日
民主党の鳩山前代表が自由党との連携を探って結局失脚し、あらためて代表選挙を行った結果、菅さんが対抗馬となった岡田さんを降して代表に就任しました。この結果については、世間的には意外という印象でしたが、内部的には当然の帰結と思われていたようです。
大きな理由は、来年の統一地方選挙と可能性が大きい総選挙です。つまりまだ知名度の低い岡田さんでは、この二つの大きな選挙を戦えないというのが議員や地方の民主党支持者の意見であるというわけです。菅さんは、とりわけ地方でまだ圧倒的な人気があり、彼が代表として応援にきてくれるかどうかは、政治を職業とする人々にとっては死活問題なのだといいます。
この民主党の動きと並行して民主党の一部が保守党に合流するという動きも表面化しました。民主党のままでは、政権の座が取れないと読んでのことでしょう。やはり政権を取ると予算編成という大きな武器が手に入って、それが自分の将来を決める(必ずしも利権だけを意味するものではありません)という永田町の常識ということなのでしょうか。
小泉改革のすそを踏む民主党
ただここで気になるのは、民主党の弱体化が「小泉改革」の足を引っ張るという現実です。これまで小泉さんは内閣総理大臣の伝家の宝刀である議会の解散権を振りまわしてはいないものの、実際には背中の後ろにいつも隠していました。つまり自民党が小泉改革に抵抗するならば、「俺はいつでも自民党を出て小泉新党をつくるぞ」という姿勢をちらつかせていたのです。
そのとき小泉新党に合流するのは、自民党の若手を中心とする改革グループと民主党の大部分という構造だったわけです。だから鳩山さんは小泉さんを正面から批判するよりも、どちらかといえば自民党の抵抗勢力を批判し、小泉新党へのエールを送っていたわけです。
その民主党が現在のようにゴタゴタすると、小泉さんにとっては隠し札が一枚なくなることになります。となれば自民党内の抵抗勢力は抵抗しやすくなるわけで、結果的に小泉改革の足を引っ張ってしまうということです。もちろん菅さんが小泉首相との直接対決を売り物にして、それが統一地方選や総選挙での民主党の勝利につながれば、また別の構図が生まれるかもしれませんが、実際にはそこまでは民主党が盛り返すのはむずかしいでしょう。
世界に見捨てられる国、日本
本来であれば、民主党がもっとしっかりして2大政党時代に入り、いつでも政権交代の可能性があるという緊張感のある政治が望ましいはずです。そのときには官僚機構ももう少し民意のありようを意識した政策を考えるようになるでしょうから。しかし今回の民主党の混乱で、その可能性は再び遠のいてしまったかもしれません。
一方、自民党のほうは、一つの党内で「与野党ごっこ」を繰り返しながら、それでも何となく小泉効果があるうちは小泉さんをかついでいくという、これまた舵の定まらない話になりそうです。どう考えても今の段階では小泉さんを超えて日本をいい方向に導いてくれるだけのビジョンをもった人はいそうにないし、自民党自体がそういう可能性をもっているとは思えないからです。
改革ということに関しては、世界はもうとっくに日本に見切りをつけているようです。世界からどう見られようと、ある意味ではいいのですが、私たち自身が自分の将来をこの国に託さざるをえないのなら、いったいどうすればいいのか、民主党がこけている今、選択肢はますます少なくなっている感じがしてなりません。