今回のワークショップ『プレゼンテーション』は、迦樓羅舎(かるらしゃ)代表の俳優・丹下一さんを講師にお迎えし、自己表現の技術を身につける3回シリーズの総仕上げです。コミュニケーションにおいて、前回までに身につけてきたスキルを生かしながら、深い集中力で「今の自分」を表現することに取り組みました。
■素早い判断、素早い行動
今回も受講者のみなさんが輪になり、この時間だけのニックネームを自分につけることからスタート。ただ「気持ちの良いストレッチ」には、受講者のみなさん一人ひとりのオリジナル・ストレッチを取り入れました。一人が気になる部分のストレッチをしてみせ、他の人が同じ動作をするのです。みなさんは、ご自身が気持ちが良いと感じるポイントを、前回までの講座で体得されていたようでした。
体が温まったところで全身を使ったゲームに挑戦。指示に従って「ロバ」「キリン」「ハンバーガー」のポーズを素早くとる『ロバ・キリン・ハンバーガー』など、いずれも判断力を鍛え、一つの動作に集中する一方でほかの動作にも目を向けるトレーニングの意味合いを兼ねているとのこと。みなさん楽しみながら意欲的にトライしていました。
■「プレゼンテーション」は、「プレゼント」
伸びや前屈、足首や膝のマッサージなどをしたあとに、「ニュートラルな状態から、瞬間的にある動作や考えに入りこむ」という状態を体験することに。一人が自分のニックネームを言いながら一歩前に踏み出し、ニックネームをイメージした動きをして一歩下がる。残りの人たちは一歩前に踏み出しその動作をコピーして一歩下がる。つまり、自分の立ち位置をニュートラルな状態と想定し、一歩踏み出して初めて次の動作に移り、再びニュートラルな状態に戻るのです。その後もシリーズの初回で挑戦した『ボツワナの歌と踊り』など、楽しくてしかも発展的なトレーニングが続きました。
ハイライトは、初回に行った『平家物語』の抜粋の音読に再チャレンジ。丹田を締めて心を落ち着け、まっすぐ声を発し、一つの言葉を発した時点で次に発する言葉を考え始める「意識のスピード」。丹下さんからいただいた、これらのアドバイスをみなさんは見事に消化し、初回の音読からは格段にレベルアップした音読をされていました。
「相手に何かプレゼントを捧げるような気持ちになって、物事を一生懸命伝えることが大切で、そうすれば必ず相手の心の奥深くに真意が届く」と丹下さん。プレゼンテーションの根幹は、この言葉に集約されているのでしょう。
■「自分自身を開く」ための快感
最後に、今回のワークショップの感想を述べ合いました。「他人に対し、いかに今までいい加減にものごとを表現していたかを思い知らされた」「自分の未知の部分に触れたような体験だった」など、普段の生活では意識的には体験し得ない開放感を過ごしたことへの、驚きや喜びに溢れた感想が目立ちました。
丹下さんは、「気持ちが良い」という感覚は自分自身を開くモチベーションになるので、自分の快感を認識し大切にしてほしいとおっしゃっていました。
他者とのコミュニケーションにおいて、人からエネルギーをもらって自分自身のからだと心が開き、さらにそのエネルギーを相手に返すという、お互いにとっての相乗効果が生まれるとも。「僕自身も、みなさんからたくさんのエネルギーをいただくことができました」という丹下さんからみなさんへのねぎらいの言葉で、講座は幕を閉じました。