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作家・翻訳家
松本 侑子さん

服装選択の自由

松本

誤解が多いんですが、女装をする男性の大半は、同性愛者ではないんです。奥さんも子どももいる人が多いんです。女性は、スカートだけじゃなくて、ズボンも履く。自由に選べるでしょう? だから女性には、服装選択の自由があるんです。

ところが男性にはないんです。女性も昔は、髪を長くして、脚が見えない長いスカートや着物を着ていないと、ふしだらだとか、異常だと非難されました。女の人がズボンを履いたり、髪を短くしたりしていると、男のようだ、犯罪者、変質者と言われたんです。

戦前、「男装の麗人」と言われた川島芳子さんは、髪を短くしてズボンを履いていましたがスパイ容疑で銃殺されています。でも戦後、女性はズボンを履いてもいい、髪を短くしてもいい、という服装選択の自由を手にして「男装」がなくなった。それなのに男の人は、選択の自由がないんです。

男性も、夏は、暑いからズボンはやめてスカートを履きたいという人がいるなら、スカートを履いてもいいんじゃないかと思うんですけど。でも現実は、男性がジャケットの袖からフリルを出しているだけで、変態のように言われるでしょう。指輪一個しているだけでおかしいじゃないかって(笑)。

わたしはそういう風潮は人権侵害だと思っていて、女装を考えるホームページも作っているんです。そういう人たちを、男らしくない、キワモノ、犯罪者といった目で見る風潮は、1930年ごろまで、女性がズボンを履いた時の偏見と同じなんです。

女性がズボン履きだと、ふしだらだとか、女らしくない、犯罪者と言われていた、だいたい80年くらい前の意識に、男性はまだ閉じこめられているんです。「モダンガール」と言われた女性たちの短髪も足の見えるスカートも、良家の子女にあるまじき下品な身なりと攻撃されました。

でも今の女性は、個人の好みでショートカットにしたり、時にはズボンも履き、時にはスカートも履く。当たり前のことになりました。それによって女性は、活動も、思考も、生き方も、幅が広がったように思います。もしスカートしか履いてはいけなかったら大変です。

だから男性も、個人の好みで、身なりを選択できたらいい方がどんなにか楽しいのではないでしょうか。男性のスーツは、そもそも大英帝国の発展期にできた、西洋でも新しい服なんです。西洋の身分ある男性はタイツにハイヒール、巻き毛のかつら、レースのブラウスでした。昔のほうが男性は、服のバリエーションがあったんですね。

それにもともとアジア、アフリカの男性は、ズボンは歴史的に履いてない国が多いんです。とくに暑い国はアフリカ、中東なども、民族衣装は、男の人もワンピース状です。昨年スペインのバレンシアへ行ったら、男性の民族衣装が白いスカートでした、暑い土地ですから……。日本も明治までは男女、同じ型の着物でした。

佐々木

そうですよね。たしかにワーキングウーマンにとっても、ビジネスでパンツスーツを着るのが受け入れられるようになったのは90年代半ばですね。

松本

そうなんですか。わたしも家だけでなく、仕事の場でも、時々ズボンを履きます。でも女性がネクタイを絞めることにはまだ抵抗があるようですね。

佐々木

そうですね。90年代って、アメリカでも、もちろんパンツスーツで仕事をしていた人はいたんだけど、正式な場所には失礼というのはありましたね。

松本

それはヨーロッパのドレスコードですね。ヨーロッパへ行くと、女性のフォーマルはパンツは駄目で、スカートなんです。

佐々木

今は変わってきたんですよね。例えば女性のビジネスカンファレンスに出席した時のことです。90年代の前半は講演者の女性はスカートでした。それが、92年か93年ぐらいから、10人の講演者がステージに並ぶと、3人から4人パンツスーツでした。わたしすごく鮮明に覚えていて……。ああいう講演者がパンツスーツでステージに上がる時代になったんだなって。

わたしは、自分のオフィスではパンツスーツを着ていても、お客さまのところへ行くときはスカートを履いていたんですけど、最近は変わってきました。

松本

日本でも女性のパンツ姿が増えたのは、ここ10年くらいですよね。昔は家ではジーンズでも、仕事着のパンツスーツは少なかった。

佐々木

昔でもオフィスウエアとしては別にOKだったんだけどね。例えば、わたしが社長としてどこかの社長に会う時や講演の時などに、パンツスーツで行くのはよくないかなと思うこともあったけれど、ここ何年かはそう思わなくなりました。

松本

そう考えると、今でも女性の服は変化しているんですね。男の人も、もし履きたい人がいるのなら、昔のようにズボン以外の服も着られる自由な社会になれば、男の人も気分や行動が、何か変わるのではないかと思うんです。

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