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伊勢崎賢治さん
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国際社会からコンセンサスを得るための戦略的な努力を全くしていない
- 伊勢崎
そうです。北朝鮮のような破綻国家を扱う場合は、絶対的に人道性は配慮する。悪政の下で一番苦しんでいるのはその一般国民であるという認識に立って、制裁の手段を考える。その意味で、制裁は報復であってはならないのです。報復的な側面ばかり表に出すと、逆にそれは非人道的行為と映り国際社会から理解されません。
- 佐々木
それは、どうしてですか? 政府には、頭のいい官僚がいっぱいにいるはずなのに、どうして外交問題になると。不思議でしょうがないんです。
- 伊勢崎
これは、ある種のすり替えなんですよね。拉致問題って二つの側面があるでしょう。一つは人権侵害ですよね。国家が、それも、よその国家が我が国の個人をターゲットにする人権侵害。これは最も過激な国家による人権侵害だと思います。それと、もう一つは、いわゆる他国が国内まで来て拉致していったということ。これは国権の侵害であるわけです。人権侵害と国権侵害。この両方が内在しているのが拉致問題でしょう。で、通常、人権問題っていうのは国家が起こすことですよね。だから国家主義と人権問題っていうのは相対するというコンテクストがある。
でも両方が内在しているのが拉致問題の複雑なところなんですね。で、一番いけないのは、タカ派の議員が、憲法を変えたいとか、自衛隊を軍にしたいとか、自虐史観を腹立たしく思っている、中国がいけないんだ、韓国もいけないんだっていう人達が、拉致問題の国権侵害の部分、容易に国家主義的な雰囲気が生まれやすい部分を増幅させることによって、拉致問題を自分達の政治活動のために利用しているふうに見えるんです。
拉致問題への解決は、人権侵害という側面でしか国際社会の共感を得られないでしょう。国家主義を表に出して、共感が得られるわけがないでしょ。特に、太平洋戦争においては責められる側の過去を背負っている日本にとっては。
でもタカ派の政治家たちは、その片一方だけをとって、自分達のために政治利用する。それで一番被害を受けているのが、僕は、拉致被害者家族だと思います。僕は、拉致問題を、国威高揚という自分たちのアジェンダのために政治利用する人達が一番許せない。
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