ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第40回 枝廣淳子さん

40 |
同時通訳者・環境ジャーナリスト・セルフマネジメントコーチ
枝廣淳子さん
|
|
|
セルフコーチングと学習メソッド2:忘却曲線の活用
- 枝廣
そうですね、人はどうやって学び、どうやって忘れていくかということを勉強する学習心理学に、「忘却曲線」というのがあるんです。たとえば、ある日50個の単語を覚えますよね、この50個を永久に覚えているということはなくて、徐々に忘れていきますよね。これを表したのが忘却曲線で、曲線が落ちかけてきたときに復習するなどして線を引き上げると、記憶はまた戻る。で、また落ちかけると戻すっていうのを何回かやると、記憶が固定するんです。
この曲線に基づいて、覚えた単語を復習するタイミングがわかるようなしくみを夫にコンピュータで作ってもらったんですね。同時通訳者になるための最初の課題は、語彙力のなさとスピードについていけないことですから、雑誌とか新聞とか読んで、わからない単語を手当たり次第どんどんコンピュータに入力していきました。
- 佐々木
それは、具体的にどんなシステムなんですか?
- 枝廣
アクセスっていうデータベースなのですが、日付をつけて、新しい単語を入れて、復習ボタンを押すと、そのとき復習すべき単語が出てくるというもの。復習のタイミングは、2日後、3日後、5日後、7日後、14日後だったかな。たとえば、今日覚えた単語を次の日に復習しますよね。たぶん40個くらいは覚えてるので、今日パスした40個は、次に5日後のグループに入る。今日覚えてなかった単語にはもう一回、今日の日付がついて1日目のグループに入る。そうやって、覚えているものは先送りして、覚えてないものは1日めからやり直して、14日後まで進んだものは、ほぼ覚えましたね。
- 佐々木
なるほど。たしかに、通訳などで覚えたはずの単語が出てきたのに思い出せず「これ1カ月前にやったじゃない」てありますが、それじゃ駄目なんですね。
- 枝廣
やはり相性の悪い単語ってのあるんです(笑)。そういうのって精神的にも嫌じゃないですか。でも、それはそれとして、14日目まで終わった単語をソートすると、覚えた単語の数が出るので、その数が増えていくとうれしいんですよね。それはひとつの自分の進捗の目安だったし、単語を覚えられてるっていう実感が持てたので。最終的にはデータベースに1万語くらい入ってたと思います。
スピードに関しては、テレビをとにかく聞きました。クローズドキャプションだと、音を聞いた後、目で確認できるじゃないですか。だから、だいたい1日2時間くらいは、同じ時間帯の同じようなレベルの番組を聴くようにして、「石の上にも3年」ていいますけど「テレビの前にも2年だ」とか言ってずーっと見てました。
- 佐々木
ビデオ録画をしたりして?
- 枝廣
は、しないで、辞書とメモ用紙だけ置いてテレビの前に座って。これも今思うと、ベンチマークだったんでしょうね、そのときはそういう言葉は知らなかったんですけど。これと決めた番組を聞き終わったら、今日は何パーセントくらいわかったかを、主観的なんですがメモしていったんですね。最初は1パーセントなんです。「クリントン」という単語がときどきわかった、くらいで(笑)。それが、3週間とか2カ月すると、ちょっとずつあがってくるんですよ。
語学の勉強で一番難しいのは、進捗が見えにくいところだと思うので、いかに自分が歩は小さいながらも進んでいることを感じさせられるか、に工夫したんですね。
進捗が感じられなくなった状態をスランプというのだと思うんですけど、スランプになったときは、ノートを見返すと今は10%くらいで止まっているけど、前は1%だったじゃないか。9%は聞きとれるようになったじゃないか、と思うと少しやる気が出る。勉強の内容も工夫しましたけど、それ以上に、どうやって自分を2年間通して、一番いい状態で勉強させ続けるかということを工夫しました。それがたぶん、今の「セルフマネジメント」の基本になっているような気がします。
14/19
|
 |
|
|