ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第40回 枝廣淳子さん

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同時通訳者・環境ジャーナリスト・セルフマネジメントコーチ
枝廣淳子さん
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勉強のコツは、具体的な目標設定
- 佐々木
それで、2年間で同時通訳ができるレベルにまでなった、と。
- 枝廣
いえ、そこまでは。帰国時には、英日は逐次ができるレベル、日英は、しゃべるのが苦手だったんで、そこまではいかなかったですね。でも、全力でやって、自分が設定した目標の8割くらいまではやれたかな、とそれはそれで満足して帰ってきたんですけど。
- 佐々木
それはそうですよね。で、日本に帰ってきてからも、同時通訳の学校に行かれるんじゃなくて、on the jobで学びつづけた?
- 枝廣
最初にね、1年間行きました。それはね、勉強というよりも、通訳市場がどうなっているか知りたかったので。その後、そこで出会った先輩や先生がいろいろ紹介してくださって、仕事をもらえるようになったんですね。だから通訳学校は1年だけ。
- 佐々木
「バックキャスティング」っていう言葉が出てきましたが、これは仕事にも勉強にも、とても役立つ方法ですよね。
- 枝廣
そう思いますね。通訳・翻訳をやっていると「英語の勉強の仕方を教えてください」ってよく言われます。そういう方にわたしが最初に「あなたは英語ができるようになって何がしたいですか? 思うように英語が話せるようになったら、あなたは何をしているでしょう? そのイメージを聞かせてください」と聞くことにしています。
そのとき、反応は二種類ある。イメージをはっきり持っている人と、持ってない人。たとえば、「来年アメリカ赴任が決まっているから、通訳を使わずに交渉がしたい」とか、「自分の趣味の世界は、日本での同好者が少ないけれど海外には多いから、そういう情報をネットで取りたい」とか。「アメリカに住んでいる息子夫婦に子どもが生まれたから、その孫と国際電話で英語でしゃべりたいんだ」とか。イメージがあれば、そのためにどういう勉強をしたらいいかってわかりますよね。たとえば、孫と話したい人にビジネス英語を教えてもしょうがないわけで、「おむつ」とか「よだれかけ」といった単語を覚える必要がある。
一方、イメージがはっきりしていない人は、「やっぱりこの時代、英語くらいできないと」、とか「英語ができるとカッコいいし」という理由で始めようとするんです。彼らがいままでどういう勉強をしてきたのかというと、あの勉強法がいいというと飛びついて、途中で挫折し、あの英会話学校がいいとなれば行ってみて、なんか違うなってやめて、TOEICの勉強始めたけど、やっぱりTOEFLがいいって問題集を変えたり。
これを「フォアキャスティング」と言って、現状で何ができるか考えて、そこから前に進む。それだと、どこに向かっているのかもわからないし、エネルギーも無駄になって、もったいないですよね。見知らぬ町の名前を言われてその町まで行けと言われたら、地図で今自分がいるところを開いて、こっちかな、こっちかな、とはやりませんよね。行けと言われた町のページをまず開いて、そこから自分の現在地までたどり、位置や方向をはかりますよね。それが「バックキャスティング」なんです。
好きなだけ時間があるときはフォアキャスティングでもいいと思うんです。でも、人生には制限時間があるし、わたしたちの毎日にも制限時間がある。たとえば、仕事でレポートをかかなきゃいけないなら、レポートにはどんな要素が必要かを考えて、提出日までの時間を逆算していくと、最初のリサーチに30分かけられるとか、誰かにみてもらうために30分必要だ、とか、そういう計算をした上で取り掛かったほうが、最短距離でいけると思うんですね。リサーチを心ゆくまでやっていると、それで終わったり。
- 佐々木
時間管理を視点に、「ミリオネーゼの手帳術」という本を書いたんです。手帳を使って時間管理をしていくための本です。その手帳の使い方でわたしが説明しているのは、まさに今おっしゃった「バックキャスティング」です。わたしはよく、「逆算で考える」というのですが、自分が実現したいことを、日常的に逆算して、行動計画に入れ、自分の手帳に書き、そのとおり実行する。そういうことなんですね。
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