ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第44回 アラン・ケイさん

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HP研究所シニア・フェロー、Viewpoints Research Institute プレジデント
アラン・ケイさん
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子どもの方が、何でも知っている
- アラン
でしょう? 彼女はそれを何年も続けてくれたのです。彼女はルネッサンスが好きでした。クラスの初日、教室の、ある壁一面に大きな白い紙が貼ってありました。またもや彼女は、それについて何も言いません。数ヶ月後、理科で海洋生物について学んだ後で、彼女は私たちに、ジョイントプロジェクトをさせました。ルネッサンスのフレスコ画のように理科と図工とを合体させて…。
- 佐々木
今振り返ってみて、彼女のことを、どんな教師だったと思いますか?
- アラン
彼女の一番面白い点を一言で言えば、私たちは彼女が何を知っているのか、何の専門家か、最後までまったくわからなかったということです(笑)。というのは、自分が何の専門家かということより、「子どもたちのほうが、ずっと何かを知っている」ということを前提に、子どもたちが伸びることに終始徹底して注目していたからです。
- 佐々木
教えるのではなく、引き出す教育、ということですね。
- アラン
ええ。彼女は、私の人生に影響を与えました。大事なことは、彼女が、一人一人の子どもがそれぞれ違った興味を持っていることをしっかり認識していたということです。子どもにとって重要なのは、深い経験を重ねることだということも理解していました。子どもっていうのは、何かに興味を持てば、しつこく追求しますよね。
だから彼女は、大人が子どものために線路を敷いてやる必要はないと、固い信念を持っていました。子どもたちが集まってグループを作れば、互いに相談し、教えあうでしょう。
私が大学院に行ったとき、そこはまさに小学4年生の時のこのクラスのようでしたよ。もしかすると彼女は、小学4年生のクラスを良質の大学院のようにしたのかもしれません。
- 佐々木
教科書どおりに何かを教えるのではなくて、子どもたちが自ら発見し、話し合い、互いに教え合うことを促す環境を作るのが、教師の役割ということですね。
- アラン
そう。彼女は本当に正しかったと思います。大学院と小学4年生の違いなんて、少し知識のあるヤツがいるということくらいです。重要なのは、学ぶ時にどんなプロセスを通るかです。こういうものだと習うか、自分で体験を通して学ぶか。彼女は本当に才能のある教師でした。
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