ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第44回 アラン・ケイさん

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HP研究所シニア・フェロー、Viewpoints Research Institute プレジデント
アラン・ケイさん
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IT教育、発想の転換
- 佐々木
今、本だけではなくコンピュータが普及していて、私たちの子どもも活用し始めています。コンピュータで学ぶ、ということに関しては、専門家としてどのようにお考えですか?
- アラン
ITにはちょっと厄介なところがあります。
- 佐々木
どんな?
- アラン
印刷機が登場する前に、人は大いに学び、大いに考えました。そして今、印刷機やコンピュータを持つようになった。でもその何が特別なのでしょうか。印刷機やコンピュータがあるからといって、人は違う考え方をするようになったでしょうか。
よく「コンピュータによるカリキュラム」という表現をする人がいますが、私はいいフレーズだと思いません。それは、「紙によるカリキュラム」と言っているのと同じです。カリキュラムというのは、本来、学習する人のアイデアや心理を構築する環境のことであって、それが紙かコンピュータかは関係がないのです。
- 佐々木
そのとおりです。では、子どものカリキュラムでは、何が重要だとお考えですか?
- アラン
私は、新しいアイデアを学ぶことが、すべての子どもにとって一番重要だと考えています。
子どもがコンピュータの使い方を学ぶか否か、私たちがコンピュータを持つか否かは、過去200〜300年に新しいアイデア、発明、発見があふれ出たことと関係があります。
19世紀になっても、科学者の多くは、熱心な実験で得られた結果は、宇宙の真理を忠実に表すものだと思っていました。たとえば有名な物理学者のマクスウェルは、電磁現象に関するマクスウェルの方程式を書き、光が電磁気の一部であることを発見しました。彼は19世紀最高の物理学者です。
しかしその偉大な研究結果は、当時の英国の物理学者らには受け入れられませんでした。それより150年前に発表されていたニュートンの理論と矛盾していたからです。そのため、英国人は無線の発明に失敗しました。マクスウェルの論に興味を持ち、さらに研究を深めて無線を発見し、その他数々の発明をしたのは、ドイツ人でした。
20世紀以降になると、科学とは頭の中にあることと実際にあることを協議させる方法であると認識されています。私たちがいつも得ているのは一種の数学なのです。
ですから、新しいアイデアを学ぶことが、すべての子供にとって非常に重要なのです。それは、我々がなぜ子供に言葉の読み書きを教えるかとよく似ています。
日本では日本語、米国では英語を教えます。米国の大学で学生に英語の授業を取らせるのは、プロのライターにさせるためではありません。読み書きに伴う考え方に関連があるのです。
- 佐々木
それは、科学についても同様のことが言えますね?
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