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脳科学者 ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー
茂木 健一郎さん
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「なぜそれを選んだか」の脳の研究
- 佐々木
物理的な脳へのアプローチが上手くいかないというのは、わかるのですが、以前見た番組で、「年をとった人の脳が成長するのか」といったテーマで、出てきた年配の男性が、定年後に中国語の勉強を始め、数年で使えるようになった、という話がありました。その彼が、今新しく取り組んでいる韓国語を勉強しているときと、ある程度学習してわかっている中国語の勉強をしているときとで、脳の活性を見てみると、新しいものに挑戦しているときの方が脳が活性している。80代でも脳は成長する、という結果でした。
私たちイー・ウーマンでも、脳のストレッチ運動をしているんですね。サーベイを読んで選択肢を広げるとか、I statementでものを書くということが脳のストレッチ運動で、脳を活性化させていると思っているんですが。
- 茂木
そうですね。だから今のおじいさんの例で言えば、中国語をやろうと思ったり、韓国語をやろうと思ったり、というところに、最大のコア、その人らしさがあらわれていると思うんですね。その選択をどうするかというところが、ぼくが、というか、われわれの立場からすると一番重要なことなんですね。
中国語をやったり韓国語をやったりするというのは、それは分かっていることなんですよ。問題は、なぜその人が中国語を選択したかとか、韓国語を選択したか。そのときに、どういうことと迷って、その結果どうやってその選択に行ったのかっていうところが、一番今脳科学では興味を持たれているところなんですね。
だから、まさにおっしゃった、選択を広げるということ、広げられた選択の中でどれを選ぶかということがすごく重要なことで。現代生活って、本当にいろいろな選択の可能性がありますでしょう? それから、何を選ぶかというところに、本当にその人らしさがあらわれますよね。何をやるかっていうことは、実はトレーニングというのでは鍛えられないんですよね。それは、最後の最後、ぎりぎりの決断ですからね。
そういう決断の積み重ねが人間を作っていくという。どちらかというとそっちのほうに、脳科学の興味というのが移ってきているということなんですよね。
- 佐々木
そうなんですね。何かを勉強しているときに脳が活性化するのは当然で、その人が、どんなきっかけでやる気になったのか、その人がそもそもなぜそれを選びたいと思う気持ちになったのか、というところですね。確かにそれが解明されたら、面白い。
- 茂木
そういう問題を感情の働きで理解しようというのが、われわれが今やり始めている、非常に大きなリサーチトピックで、分かりやすく言うと、何かを選択して何かをやったら、脳がある働きをするというのは、それは分かっているんですよ。その結果鍛えられているのも分かっているんだけれど、そもそもその選択をどうやっているのかという、そこにその人の人生っていうか、どう反映されていて、脳の働きとしてはどういうことが起こっているかを理解することが最も重要なこと。
たとえば。なんで佐々木さんが今なぜこのような会社を作られているかっていうことですよ。作られた後で、いろいろ工夫することってありますよね。そもそも根本に戻って、なんでこういうライフスタイルというか、人生のミッションを選んでいるのかというところに、最大のポイントがあるわけじゃないですか。そこで佐々木さんの脳で何が起こったかということに、今の脳科学者はもっとも興味を持っていると、そういうことですね。整理するとね。
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