ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第57回 茂木 健一郎さん

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脳科学者 ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー
茂木 健一郎さん
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クオリアに向き合っている私
- 茂木
それはすごく重要な点で、要するに、一度物理学みたいなすごく精緻な学問体系を経由したからこそ、ちょっとショックが大きかったっていうことで。たとえば、こうやって物が落ちるとかって全部方程式で書けることは事実なんですよ。われわれの脳とか体の動きも。それは事実としてはあるんです。
だから論理とか数値でこの世は動いているんだけれど、われわれに意識があってクオリアを感じているというのもまた事実で。その2つをどう融合させるか。
- 佐々木
面白いですね。それは、たとえば、人が言葉を選ぶときも同じですか? 多くの人が無意識で言葉を選んでいます。だから口癖のように発する言葉っていうのは人によって違っていて、習った語彙数はある程度みんな一緒のはずであるにも関わらず、表現の方法が変わっていたりする。
で、コミュニケーションの世界では、93%がノンバーバル、と言われるように、実はコノテーションも重要。当然、声の大きさや高さ低さ、声の表情、着ている服、座っている位置などで、伝わるメッセージがまったく変わっているわけですよね。こういった反応も、今おっしゃっているような、クオリアというのに属しているものですか?
- 茂木
当然属するというか、つまり分かりやすく言うと、クオリアってたとえば、赤いものが見えているという事実があるときに、その赤だけが問題になっているのではなくて、それを見ている私というのが、対になって問題になるわけです。
それを見ている私っていうものの中には、今おっしゃったような無意識のものとか、感情とか、記憶とか、今までの来歴とか、そういうのがすべて入ってきてしまうので、ある意味ではクオリアに向き合っている私、というものには、極端なことを言うと、宇宙全体が入ってきてしまうような、そういう構造をしているわけなんですね。
ですから、コミュニケーションにおけるノンバーバルな要素とかそういうのも当然反映された形で何かを感じるんですね、われわれの意識の中で。ですから、ちょうど図と地の関係というか、図を見ているとクオリアだけれど、それを成り立たせている地を見ると、ものすごく広がりのある世界がそこにある、ということだと思うんですよね。
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