ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第59回 野口 健さん

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野口 健さん
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山に登る理由
- 佐々木
山に登る人、なんか山の男っていうと、人のことは好きじゃなくて、雄大な山のみを愛するみたいな感じですけど、野口さんの場合はそうじゃないんですよね、きっと。
- 野口
ああ、僕、あんまり山は好きじゃないですからね。山は辛いですからね。
- 佐々木
え? 山が好きじゃないの? じゃあ、なんで登るんですか?
- 野口
それが、ずっとわかんなかったんですよ(笑)。3年前にエベレストに行ってね、もう本当にやめようと思ったんです。冗談じゃないと思ってね。で、1年半、離れてたんです。そうしたら、あれだけ行きたくなかった山に、1年経ったら、また行きたくなってるんですよ、同じ山なのに。で、僕は「なんでだろう?」と思ってね。
そのヒントが見えたのは、2005年1月にアフリカの国立公園に行った時です。国立公園をまわってたんですけど、野生動物がいっぱいいるじゃないですか。野生動物がいっぱいいると、動物同士っていうのは弱肉強食だから、厳しい世界ですよね、顔が険しいんです。ちょっとした音にもピーンと敏感だし。まあ、なんですかね、生き生きしてるんですよね。
それをずっと見て、帰ってきましたらね、うちは猫を飼ってるんですけど、うちの猫がゴロゴロ、ゴロゴロ、腹を出して寝っ転がってましてね。緊張感のかけらもなくって、「お前、それは違うだろう」と怒りましたけどね(笑)。なんですかね。日頃、日本にいるときの自分が、たぶんうちの猫状態なんですよ。
- 佐々木
ああ、そうか。
- 野口
ヒマラヤに行くと、危険な場所ですので、すべて感覚で自然を感じるので、音にも敏感になりますしね。ヒマラヤに行ってた時の状況が、たぶんケニアの野生動物の状況ですよね。
- 佐々木
人間としての、すべての素質を発揮して、きっと自分の細胞がフルにピピッとなってる状態が、山の上にある状態なんですね。
- 野口
そうなんですよね、たぶん。だから僕にとってヒマラヤに行くっていうのは、感覚で自然を感じることができる場所だからじゃないですか。
- 佐々木
ええ。
- 野口
行くと音にも敏感になるんですよ。危険な場所ですからね。温度も湿度もね、感覚で自然を感じられるんです。だから、環境問題も同じですね。確かにデータとかそういうのは、大事なんですけれど、もっと感覚で感じる、なんだろうな、現場感覚なんでしょうね。そういうのがあっていいなって。
- 佐々木
簡単に言えば、嫌だった、気持ち悪かった、変だったという体験をしたら、環境を気にかけるようになるってことですね。
- 野口
あと、危険感。だから、何で山に登るのかというと……、たいして山なんか好きじゃないですけどね、山という舞台がおそらく、僕が感覚で自然と接していかれる場所なんですよね。アフリカに行ったとき、「これだ」って思ったんです。
- 佐々木
よくわかりました。野口さんのお話は面白いし尽きないのですが、とっくに時間が過ぎてしまった(笑)。また、続き聞かせてください。本当にご活躍、お祈りしています。まずはお体大切にされて、奥様、お嬢様との東京の時間も大切にしてくださいね。今日はありがとうございました。
対談を終えて
なんとも自然で、おちゃめな野口さん。対談時間をとっくに過ぎているのに止まらずにおもしろいお話を続けてくださって、楽しかった。登山は私には未知のことですが、1つのことに挑戦するときのさまざまな思いや準備。そして自分が没頭していることを、客観的に見てみることの余裕と姿勢。すべてが勉強になります。本当に富士山が世界遺産になると、いいなあ。これからも仲良くしてください。
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