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伊藤元重さん
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「1日1冊」にも取り組んで
- 伊藤
ただ、こういうことをいうと怒られるんだけど、大学の勉強って面白くないんですね。特に、東大の駒場っていうのは、哲学の先生が哲学をやってくれるんだけど、つまらない。
その時からですね、僕、読書癖がついたのは。今でも覚えているんですけど、18歳ぐらいの青年には非常にインパクトがあるんだろうと思うんですけど、加藤周一という人が『読書術』という本を書いているんですよ。これは要するに本当に一般向けで。今、再版されているみたいですけどね。
それを読んで面白かったんで、彼の、岩波新書で『羊の歌』っていう本も読んでみた。よく覚えているんですけど、その中に杉浦明平っていう作家の話が出ていて、1日1冊彼は本を読むって書いてあるんですよ。で、これをやってみようっていうので、1日1冊読んだんですよ。
- 佐々木
大学1年生の時ですか?
- 伊藤
ただし、2カ月ぐらいで挫折しましたけどね(笑)。そこに、「分からなくてもいいから、とにかく1日1冊読め」と書いてあったんで、なるべく薄い本を買ってきたり、借りてきてね。その時に雑学の勉強を始めて。その時は、ほとんど経済学の勉強という意識は、まだなかったですね。
- 佐々木
広く浅く何でも。
- 伊藤
とにかく背伸びをしていて、同級生の人たちみたいなのがいて、そこに何とか、という癖がついていって。
東大の場合には、大学2年になると経済学を始めるんですね。その時にたまたま、駒場で教えていた根岸隆って先生、この人は当時、ノーベル経済学賞に一番近いといわれた、後に私のゼミの恩師になるんですけど、この先生の講義がすばらしい講義だったんですよ。それで「経済学って面白いな」と思って、少し経済の勉強を始めてね。
- 佐々木
やはり、いい先生との出会いですか。
- 伊藤
私の場合、非常に幸いだったのは、その頃何人か、私よりも、はるかにませていて、しかし経済の学問を目指そうというような人がいて、それが今、ほとんどが東大の同僚なんですよ。
経済財政諮問会議にいた吉川洋君とか、日銀の政策審議で一度東大から出て、また戻って、今、東大の経済学部長をやっている植田和男さんとか、財政学で日本の最高権威である井堀利宏さんとか、こういう人たちと出会って、一緒に何か勉強しようということになって。ですから、大学3〜4年の時代っていうのは、結構、経済学を勉強しました。
この前も、同級生の1人で、今度、和歌山県知事になった仁坂君っていうのがいるんですけど、彼に言われたんですけど、「伊藤さん、よく覚えている」と。「全然授業で見なかった」って(笑)。僕、苦手なんですよ、授業。ですから、授業はあまり出なくて、とにかく、ひたすらそういう経済の本を読んだんです。
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