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伊藤元重さん
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スマートコンシューマとのコミュニケーション
- 佐々木
マーケティングについてですが、「マスが縮小している」っていうふうに、私はよく言うんです。簡単に言えば、1つのメッセージをマス広告にポンと出せば、みんながそれを買いに行ったという時代が終わりつつあり、自分で考えて選ぶ賢い消費者、スマートコンシューマが増えてきている。だから企業は、コミュニケーションを工夫していく必要があると思うんです。
- 伊藤
そうですね。マスのビジネスモデルが、もう難しくなったので、できるだけ、いわゆるフェイス・トゥ・フェイスなどのレベルまで行ければいい、と。それは1つの方向だと思うんですけど、ただ、多くの商品が、ある程度のボリュームが出ないと難しいので、そこら辺の塩梅が非常に難しいと思うんですね。
だから、佐々木さんのところのコミュニケーション的な、あるいは、プロシューマー的な新しい手法でやるっていうのは、僕は1つの方法だと思いますし、もう1つのやり方は、セグメンテーションをつねに見直していくっていうんですか。それぞれのセグメンテーションに違うバリューを提供する、と。
しかし、その時に大事なのは、例えば男性のマーケットと女性のマーケットだとか、あるいはシニアとジュニアとかいう月並なセグメンテーションじゃなくて、そこをつねに見直していくっていうのは大事だと思うんですね。で、佐々木さんのいうコミュニケーションっていうのは、そういうところに通じるのかなって。
例えば、女性の30代の方でも、オフィスにいる時の消費者の顔と、ウィークエンドで家族といる時の消費は、全然違いますよね。だから、同じ人でも違うとすれば、それを分けて切るという切り口もあるかもしれないし。
- 佐々木
そうですね。デモグラフィックではなく、サイコグラフィックで切るっていうことと、一人の消費者の二極分化。イー・ウーマンでコンサルテーションするときにお話しする基本です。
- 伊藤
そうですよね。そんなことは、化粧品の世界では当たり前なんだけど、意外とそういうのは、普通のマーケティングができていないんですよ。
私、ある時、ドコモの研修会に行って、笑っちゃったんですけど、携帯電話が普及して、もう限界になってきて、これからは、できるだけ多様な売り方をしようというので、コマーシャルで、ファミリーを出したんですよ。記憶で申し上げているので間違っているかもしれませんが、確かお父さんが田村正和さん、お母さんが万博のマドンナの竹下景子さん、娘さん役に鈴木京香さん。それでみんな違ったライフスタイルでやって、できるわけですよ。
それを見て、僕なんかも、「そうか。おじさんでも、ドコモで結構おしゃれにやれるんだ」と思ったんですけれども、そう思ってドコモショップに行った途端に、突然、私は番号札65番のおじさんで(笑)、しかも、これは私のひがみなんですけど、大体、ドコモの受付にいる女の子って、「どうせ、このおじさん、よく分からないだろう」という感じで。
だから、せっかく先んじたマーケティングをやろうしているのに、どこかで化けの皮が崩れちゃうんですよ。
- 佐々木
そうですね。それは自動車業界にもいえます。どんなに「女性に優しい」ってCMでいっていても、ディーラーに行った瞬間に、夫にだけに勧めて、「奥さん、向こうでお茶飲んでいてください」って。もうダメです。
- 伊藤
だから、メーカーのマーケティングは、まだまだやれる可能性があると思います。消費財をやっている方が、まだ少し。
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