<3ページ目からの続き> ……答えは大きくなりますね。個別の株価に1万円を超えるものがほとんどないのに、平均株価が1万円を超えているのは、こんな理由だったのです。 要は、連動性を見るだけの数字なのですね。前日に比べて上がったか下がったかの目安でしかないのです。 でも、株式市場の関係者は、ずっと平均株価に慣れ親しんできました。 「日経平均が3万円を超えたとき……」「日経平均が8000円を割り込んだとき……」 みんな、数字にさまざまな思い出を持っています。そこで、連動性を維持する以外には意味のない数字になっていても、みんなこの数字を使い続けているのです。 ただ、証券会社は、この日経平均株価連動タイプの投資信託を売っています。これは、投資家から集めた資金で、日経平均株価の計算対象になっている225社全部あるいはほとんどの会社の株を買うというものです。こうすると、日経平均株価が上がれば、投資信託の価値も上がります。「これから株式市場は値上がりが続きそうだけど、個別の株は何を買っていいかわからないので、株価全体を買っておこう」という人にふさわしい商品です。こういう投資信託のことを考えると、単なる目安とも言い切れず、それなりに役割があるとも言えそうです。 いまの動きから未来を予測 一方、株式市場で使われる数字には、もうひとつ、TOPIX(トピックス)があります。 こちらは、東京証券取引所が計算している「東証株価指数」です。計算を始めた1968(昭和43)年1月4日の一部上場企業の株価の総額を100として計算しています。 指数ですから、単位はありません。2つの数字は別々のものですから、一方が上昇しても、もう片方は下がる、ということもたまに起きます。 この指数は、除数がどうのこうのということはないので、株式市場全体の動きを見るのに適当なのですが、たとえばヤフーのような、単独で時価総額が大きい会社の株価に大きな動きがあると、それに引きずられて動くという傾向があります。 また、こちらは指数で、「円」というお金の単位がついていないので、昔気質の証券マン(ウーマン)たちには、ピンと来ないという事情もあるようです。 それにしても、最近の株価上昇。「年明けには1万5000円にも」などと予想する証券関係者も出現しています。株式市場の関係者は、株価が下がり始めると、その下がるカーブを延長させて、「もっと下がる」と悲観論を唱え、株価が上がり始めると、そのカーブを伸ばして、「もっと上がる」と主張する、という傾向にあります。人はみな、いまの動きの延長線上でしか未来を予測できない、ということなのでしょうか。
池上彰の 『解決!ニュースのギモン』