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「国政調査権」の発動を求めたが
自民党が、「そんな事実はない」と否定したところ、民主党は、「銀行口座の番号がわかっているから、国政調査権を使えばすぐに判明することだ」と主張しました。
国政調査権は、憲法で定められた国会の力です。憲法第62条に、「両議院は、それぞれ国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる」と明記されています。
民主党にしてみれば、「銀行口座番号を銀行に示して、誰の口座だと問いただしても、銀行は客のプライバシーを根拠に回答を拒否するだろうから、国政調査権を使って調べてもらおう」と考えたのですね。国会が質問すれば、銀行としても答えざるをえないだろうというわけです。
自民党が、「事実無根だ」と主張するのなら、堂々と国政調査権を使えばいいではないか。それをしないのは、自民党に後ろ暗いところがあるからだ、というのが民主党の主張でした。
確かに、「自民党がさっさと国会として国政調査権を使って調べれば、メールが本物か偽物かわかるから、さっさと調べればいいじゃないか」と思った人も多いと思います。しかし、自民党にしてみれば、うっかり国政調査権を使う前例を作ると、今後、何かあるたびに国政調査権を使うことになりかねず、それは自民党にとって決していいことではない、という判断があるのだと思います。
ところが、国政調査権を発動するかどうか論議しているうちに、そもそも問題のメールが偽物である疑惑が強くなり、民主党による追及が腰砕けになってしまったのです。
「疑惑のメール」を検証する
疑惑のメールについて、民主党は、いくつもの箇所を黒く塗って読めないようにしてから公表しました。
新聞にもメールの写しが掲載されましたから、見た人も多かったことと思います。このメールを見ると、不審な点が浮かび上がってきます。
その第一は、メールの最初のほうに出てくる「シークレット」という言葉です。この「シークレット」の「シ」と「ク」の間の長音記号が、「ー」ではなくて、「―」になっていたのです。これは、ワープロやパソコンの初心者がやりがちな間違いです。一日に何千通ものメールを処理することを自慢していた堀江容疑者が、こんな初歩的な間違いを犯すだろうか、という疑問が浮かびます。
二番目の疑惑は、「3000万円」という表記です。全角で表示されています。堀江容疑者は、必ず半角の数字を使っているといいます。堀江容疑者のブログを読むと、必ず半角数字を使い、「3,000」というように几帳面に「, 」を入れています。「3000」などという全角数字を使うわけはない、という指摘です。
ほかにも、「宮内」と呼び捨てにするはずはない、メールの最後が「堀江」になっているが、彼は「Takahumi Horie」という表記を使っているはずだ、等々の指摘が相次ぎました。こうなると、メールの信憑性が疑われます。
永田議員が取り上げた途端、小泉総理は、いち早く「ガネセタ」だと発言しました。下品な警察業界用語を一国の総理が公の場で発言するのはいかががなものかとも思いますが、総理が即座に否定できたのは、すでに事前に、「こんな怪メールが出回っていますが、ガセネタです」という報告を聞いていたからです。こんな用語を使って報告したとすれば、情報源は捜査関係者……ということになるのですが。
当日、東京地検も素早く、「全く把握していない」と発言しました。捜査当局として、そんなメールがあれば直ちに入手に努め、疑惑追及に乗り出さなければならない立場なのに、すぐに否定したということは、やはり事前に、こんな偽物のメールが出回っていることを把握していたということなのでしょう。私は、この問題を見て……
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