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中谷 彰宏さん
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自由と軋轢(あつれき)
- 佐々木
2歳の節目で世の中を何となく見て、「周りを喜ばせたい」と気を使い始め、7歳で学級委員長になって、「向こう側に行ってやれ」と思いながら、中谷彰宏的になってきた。そこからどう中谷彰宏的って深められていくんですか?
- 中谷
父親が自由人で趣味人だったから、好きなことをやらせてくれて偏れる。フォークダンスを好きな子としか踊らないのも、「そりゃそやろ」と言ってくれる家だったんですよね。そうやって自分勝手に生きていくと、今度は世の中との軋轢(あつれき)が起こる。その軋轢とどう折り合いをつけていくかを学んでいくその後なんですよね。
「好きなことやりなさい」って、仕事を選ぶ時、就職の時、転職の時に、みんな言うんだけど、好きなことをやったら必ず軋轢が起こるわけですよね。その軋轢が起こった時にその軋轢との折り合いの付け方っていうのを覚えていかなくちゃならない。自由と軋轢というのは必ずワンセットなんです。
僕にとっての軋轢って何かっていうと、自分の中では孤独との闘いっていうのはあんまりないんです。僕は勉強が好きだから、正しいことってなんだろうっていうことを一生懸命考えるわけですね。正しいことは一瞬でわかるわけですよ。
ところが正しいことをやると軋轢が起こるのが世の中だということがわかってくる。そうすると、正しいことを押し通しちゃいけないっていうことを覚えていかなきゃいけない。まじめな子ほどそれを学ばないといけないわけですよ。
- 佐々木
おもしろい。それはどんな形でいつごろ学びました?
- 中谷
これはね、ずっと子どものころ。「世の中には矛盾がある。矛盾も含めて受け入れていかなきゃいけない」と言われたんです。
- 佐々木
それは誰がいつごろ言ったんですか?
- 中谷
父親が、小学生の時からずっと。「四角四面でやっていたんでは世の中では生きていけない。間違っていることも正しい。正しいことは正しいけど間違っていることも正しい」とね。
- 佐々木
それはお父様も立派ですけど、小学生だと、その意味を理解するのは難しいですよね。
- 中谷
そう。よくわかんない。小学生っていうのは正義感があるから、自分がこんなに正しいことをやっているのになんで間違ってる? なぜおかしいのか? 自分はこれ正しいと思ってやってるのに、なぜ通らないのか。
- 佐々木
それをとことん話し合うんですか?
- 中谷
その都度ぶつかる。
- 佐々木
それでお父様はなんておっしゃるんですか?
- 中谷
同じことを手を変え、品を変え説明してくれる。本(『子供は、ガンコな親を求めている』※)の中でも書いているんですけど、父親の得意なせりふ、母親の得意なせりふというのがいくつもあったんです。
予定を守ってくれない時、親はすぐに「予定は未定」と言うし、「約束は守らないといけないんじゃないの」と言ったら「臨機応変」と言われる。臨機応変と言われたらね、すべての約束の意味がなくなっちゃう。でも本当は約束を守ることだけじゃなくて、臨機応変ということをワンセットで覚えておかないといけない。この「ワンセット感」なんですよね。
そんな僕が最も修業させられたのが博報堂時代です。この時期は、正しいことが何かって学ぶ時期と、正しいことだけが正しくないということを学ぶ時期。転職してうまくいかない人は、正しいことはわかったんだろうけど、正しいことだけが正しいことじゃないっていうことを、きっと学んでいない。だからどこへ行っても正しいことで押し通そうとする。
- 佐々木
あるいはそれが自分だけから見た正しさであったりということもあります?
- 中谷
自分だけから見た、つまり一方向だけの正しさで苦しむとするなら、自分の中にも「正しさの正解」をいくつも持てるようになると自分自身も苦しめなくてすみます。
※『子供は、ガンコな親を求めている』(著者:中谷彰宏 出版社:TBSブリタリカ 本体価格:1,400円 ISBN:4-484-01216-2)
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