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江端貴子さん
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家族の大切さ
- 佐々木
我が家も母の手に頼っているんです。
- 江端
その状態に甘えたままでずっときていた時に母の持病が悪化したのです。これ以上子供の面倒を見てもらえないし、またこうして母に預けられることが子供のストレスにもなっていることが分かったので、いろいろと考えました。
会社では役員という責任のあるポジションにいましたので、いろいろ迷ったのですが、実は父の元気な姿を見たのはMITの1年目が終わり、帰省していた時が最後だったのです。
その時すでに父はボケや徘徊の症状が出始めていたので、娘として心配はしていたのですが、煩わしいなあという気持ちもあったことは事実なんです。
だからMITに戻らなければならない日が来ても、父にはろくろく挨拶もせずに『では私は帰るから...』という感じで実家を出てしまったのです。
家の側にタクシーを呼んでいたら、父が玄関から靴下履きで飛び出して来て、私を見送ってくれたんです。これが父の元気な姿を見た最後になってしまいました。結局父はその後脳硬塞で倒れて、そのまま寝たきりになってしまいました。
それを後悔している部分もあって、母に対しては同じような思いをしたくないので、『仕事は幾らでも代わりの人がいるし、会社も私がいなくなってもそれなりに、きちんと存続していける。今一番私を必要としているのは母と息子だ』と思った時に、わがままとは思いましたが、こういう選択をさせて頂きました。
- 佐々木
そんなお話を聞くと、私も会社を辞めようかなって思ってしまいますよ。我が家も同じ状態ですし。
- 江端
そんな! そうは言っても、決心してからも、『これでよかったのかな?』と悩みましたし、「こんなことで辞めると、次の仕事を見つけるのはなかなか難しいだろうな?」と思ったりしていたのですが、たまたま私が辞める1ヶ月ほど前に、アムジェンの本社の社長が来日することになり、事情を説明し、申し訳ないと伝えると、『全然気にしないでいい』と言ってくれたのです。
「僕も人生で優先順位をつけると、一番は自分の健康、二番目が家族で、仕事は3番目くらいだ。だから君の選択をそんなに恥じる必要も、謝る必要もない。また仕事をしたくなったらいつでもうちに戻って来なさい」と言って下さったので、「今回は母を選んでよかったんだ!」とホッとしましたね。
- 佐々木
でもサーチ会社からの電話がなり止まない状態だろうから、いつ仕事に復帰されるのかな? と考えてしまうのですが、1年間、本当に(笑)、子育てをしながら自宅での生活を続けられましたね。
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