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古荘純一さん
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いつまでたっても「心の闇」
- 古荘
それと、日本では、司法関係の問題は、プライバシーの問題から、医療面の専門家が育成される機会がないんですよね。司法事例の精神鑑定は極めて限られた精神科医が行います。専門家が増えないと世の中に還元できない。せめて小児科の医者の有志とケース会議くらいやらせていただいてもいいんじゃないかと思うのです。
- 佐々木
それは具体的にはどういうことですか?
- 古荘
たとえば子どもの犯罪が起きたときに、被害者のみならず加害者にさまざまな心理・医学検査などをしたいのですが、プライバシーの問題と司法と医療の立場の違いから、駄目なんですね。脳の検査をしたいと言っても駄目。そこに立ち会った裁判官だとか、調査官が、この子には検査が必要だっていうことで依頼をすれば、できる。しかし医者から調査の必要性を訴えても駄目なんです。これだけ少年犯罪が騒がれていますが精神鑑定は年間10〜20例程度で、補導件数全体の0.01%くらいなんです。
- 佐々木
ということはやはり、症例というか、そもそもの研究事例がないということですね。
- 古荘
そうです。
- 佐々木
別にその子のことではなく、一つの、こういう事件を起こしたこの少年のケース、というケースを集積し分析することが、アメリカなんかはきっとできるということでしょう。
- 古荘
そうですね。それは、アメリカの考え方としては、社会全体を守っていかなくてはいけないということですから……
- 佐々木
情報を共有しようということで。
- 古荘
日本はやはり、子どものプライバシーを尊重することで、秘密っていうことになりますよね。いつまでたっても「心の闇」という表現しか出来ない。
- 佐々木
秘密は守ったほうがいいけれど、データは残しておいたほうがいいって思いますよね。
- 古荘
そうです。だから私も一度、家庭裁判所の調査官の研修会で話をしたことがあるんですけれど、その時にカンファレンスしたケースを、もちろんプライバシーとかは当然保護しますし、名前を誰とか特定できる情報は絶対に分からないように伏せて、小児科のほかのお医者さん方の勉強会で提示していいかっていうと、文書で残っては困る、ということで。記憶したものを口でしゃべるのはいいけれど、文書はだめ、と、そういうふうになっていますね。現場の調査官の方々もその必要性は十分理解されているのですが、司法という立場上困難ということになります。
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