ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第59回 野口 健さん

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野口 健さん
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酸素がなくなった
- 野口
途中でわかったんです。手前、30分前後だったと思うんですけど、もう、酸素がきてないんです。「ああ、やばいな」と。まだ山頂に登っていないし、でも、もう行くしかないし。最初1時間前後は良かったんです。山頂に登ったときまでは、たぶんいいんですよね。でもすごく記憶が鈍くなってて。一緒に行ったカメラマンが映像を撮ってましたよね。僕、結構山頂でしゃべってるんですよ、映像を見ると。
- 佐々木
ああ、野口さんのサイトにある、山頂のビデオで拝見しました。しゃべってましたよ、たくさん(笑)。酸素がないっていうのに、あんなにしゃべって大丈夫かなと。しゃべるって、酸素使うだろうなあ、って心配でした。
- 野口
でしょう(笑)? でも、しゃべった記憶がないんですよ。サイト掲載は編集したものですけど、実際は15分くらい1人でしゃべってるんですよ。「危ないなあ、これは危ない」とか言いながら。だから下山の途中はもう、酸素を急激に欲しがっているんです。
- 佐々木
登る時っていうのは、スタッフやシェルパと一緒ですよね?
- 野口
はい、4人で登りました。
- 佐々木
他の人から一口酸素をもらえないんですか?
- 野口
酸素って、ずっと吸ってないと意味がないんです。ダイビングなんかだと、酸素もらったりしてますけどね。登山はダメなんです。
だから本当にね、頭の中が「酸素」しかなくなるんですよ。下山の最中に「酸素! 酸素! 酸素! 酸素が欲しい!」とかって叫んでいる自分に気づくんです。仲間からしたら、怖かったらしいですよ(笑)。いきなり僕が、「酸素くれよ、酸素、オキシジェントだよ! もう、どこにあるんだよ、酸素は! 何があった? なんで来ないんだよ」とかって。
それで下山していくと下の方に自分が置いてきたオレンジのボンベが1本見えるんです。で、それを僕はずっと見ながら、「いつまでそこにいるんだ? お前から来いよ、こっちに」と。「なに、待ってるんだよ、偉そうに。お前は俺が金を払って買ったボンベなんだから、お前が歩いて来い」とかね(笑)。なんか、完全に変になってるんですよ。
- 佐々木
ボンベに向かってブツブツ言いながら、また酸素を余計に消費する行動を取ってる(笑)。
- 野口
使ってます。もう本当に変になってるんです。記憶にあるのが、途中で酸素マスクを外して、それを、かじってた! 一生懸命にカーッて。一生懸命かじった記憶で、「あ、俺、イッてるな」って思ったんですね。そこからやっぱり、ちょっと記憶が飛んでた気がしますね。シェルパとかの話だと、もうロープを掴みながらジャンプしたりしてたらしいです。危なかったらしいんですよね。みんな、怖がってました。
- 佐々木
良くご無事で。
- 野口
山は本当に体に良くないですよ。
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