ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第82回 丹下 一さん

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丹下 一さん
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演劇に参加してみる
- 佐々木
参加型ね。プレイバック・シアターもそうですよね。私が南アフリカに取材に行ったときに、やはり即興劇があって、面白かったのね。まだアパルトヘイトが終わったときぐらいですから、最中と言ってもいいような、まだ法律が変わっただけですから、市民生活が変わっていないときに、「面白い舞台があるよ」っていうことで取材に行ったんです。真ん中に舞台があって、4面、レスリング場みたいに観客が入っている。その中で、黒人と白人の舞台俳優ですよね、アングラでしょうね、が出てきて、始まる。
たとえば、ストーリーとして、家で白人のファミリーがご飯を食べている。娘は法律で禁じられている黒人のボーイフレンドを会おうとしている。「黒人とは会うんじゃないぞ」と父が言う。……みたいなところで、一幕終わりました。すると、プロデューサみたいな人が出てきて、「次、どうしますか?」って会場に聞くの。
- 丹下
ほう。なるほどね。
- 佐々木
すると会場から、「駆け落ちをする!」とか、こっちは「やっぱりお父さんのいいなりになって、男は捨てる!」とか、いろんなことを言うわけ。いろんな声が飛んで、するとそれを聞いた俳優が、短い話し合いしたかな? そしてパッと第二幕が始まるわけです。
それで、「どっちに転ぶんだろう?」みたいに見ていると、また二幕が終わって、また「続きはどういたしましょう?」って。繰り返していく。
こういうのは、日本で見たことがなかったから、感激したんですね。展開を考えたり、あるいは自分が「きっとこうなるだろう」と思ったことから、自分の固定観念をちょっと感じるとか、さまざまな学びがあるなあ、と思って。演劇って奥が深いなと思った一つの機会なんです。
- 丹下
そう思います。だから、もう、ぜひ学校の授業で演劇って入れてほしいですね。「音楽と美術があるのに、なぜ演劇というのがないんだろう?」っていう。
- 佐々木
イー・ウーマンユニバーシティで、まずやりましょうか。子どもだけ集めて。
- 丹下
やりたい、やりたい。で、もう絶対、僕らの方が教わりますよ。先日、横浜の中学校で、ちょこっとやりに行ったら、気に入られて。熊野の市民劇のお手伝いとかをやっていても、もう絶対、僕の方が教わります。自分がもう、いかにそうは言っても、演劇人、プロフェッショナルの世界で頭が固くなっていたかっていうことを、本当に教わります。「この手があったか」みたいな。
- 佐々木
それは、「デリバリーの仕方で」っていう意味ですか?
- 丹下
もう、演技でも、なんでも。やっているときに。ちょっと小さい時間でお芝居をやってもらったりなんかしても、「その手があったか」って。いきなりその辺の椅子を被ってきたりとか、いろんなことをするんですけれども、それが本当に学びになる。いかに自分が、やっぱり、僕はそういうふうに言っているのに、どこか頭の回路が固くなっていたなっていうことに本当に気づかされます。
- 佐々木
面白いですね。
- 丹下
うん、面白いです。だから、プロの俳優っていうのは、どこかやっぱり「もう、これだけやっていれば」っていうふうになっちゃうんです。特にお仕事系の演技をいっぱいやっていると、「とりあえずこれをやっておくと、監督のオーケーが出る」とか、「この範疇だったら仕事になっちゃう」っていうことを、どこかで逆に学んでしまっているんですよね。
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