ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第82回 丹下 一さん

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丹下 一さん
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人はだれでも、歴史の最先端で生きている俳優です
- 佐々木
私、自分が手帳術の本を書いたときに、「手帳は人生脚本なんです」っていうふうにいいました。人生の主役が自分であって、その脚本を書いているのも自分であって、演出家も自分であって、ある意味、全部自分で決める長い演劇をしていると考えると、手帳っていうのはつまりは台本。人生脚本。台詞が書いてあるわけではないけれども、行動計画が書いてあって、どういう時間帯になにをやっているのか、それで自分がハッピーなのか、あるいは1年を見たとき、この期間はどういうことをしていると、主人公が一番生きるのか、ということを考えるんだよ、なんて書いたのですが、丹下さんも、そう考えますか。
- 丹下
もう、その通りですね。本当、その通り。「ここでこうやって仕事をして、きっと、すごくウキウキしているから、この夜はちょっと柔らかい時間をあげとこう」とか、その、自分をそうやってコントロールしていくことがとても楽しいんですね。それは無理して、分刻みの何とかって言って「達成感があるぞ」みたいなことじゃなくて、「どうやったら自分が一番楽しくもっていけるかな?」っていうことなんですよね。
家族といる時間も僕にとってはすごく大事だし、その時間をどういうふうに大切にできるのかとか、やっぱり仕事の時間っていうのも、本当におかげさまでとっても楽しい時間なので、「じゃあ、思い切りここで楽しい稽古をするためには、どうしよう?」っていう組み立てをすごく考えます。考えているときが一番楽しいかもしれないですけれども。走り出すと、もう、ワーッと走っちゃうのね。
皆だれでも俳優になれるのと同じように、人はだれでも歴史の最先端で生きている俳優なんです。この世界のなかの登場人物で、そして、おっしゃったように、自分で自分をどれぐらい演出できるかで、人生の楽しみがもっと深まってくると思うんですよね。
- 佐々木
そうですね。自分のなかでの、ある意味、スターの度合いっていうか、スポットライトの当て具合とかね。
- 丹下
そうなの。だから、ある晩は、もう世界の主役になったような気持ちで、とても幸せで、格好いい服で決めて表参道を闊歩する自分がいるかもしれないし、泥まみれになって土ほじくり返している自分がいるかもしれないし。
- 佐々木
それが自分のなかで、きちんと演出というか、計画されていると、両方楽しめるじゃない?
- 丹下
楽しいと思います。
- 佐々木
ね?だから、「舞台の上だけがスポットライトで、こっちは違う」とか、そういう考え方で思っていると、仕事に対しても人生に対しても、「常に表じゃなければだめ」みたいな、そこで苦しむけれども、「すべてが自分が作っているものだ」と思った瞬間に、かなり集中できて、いろんなことができるかなと思うのね。
- 丹下
大体、表に立っているその人を見れば、裏も見えるじゃないですか。やっぱり、その裏側でどのぐらい泥まみれになってきたか、みたいなものがちゃんと出てくるし。それが、泥まみれに負けちゃった人も時々いたりなんかして、そうすると泥まみれが「うーん、可哀想に」と思って見えてきたりするけれども、その泥が全部栄養になって輝いている人は、本当にすてきだなと思う。舞台って、全部見えますもん。
20/25
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