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伊藤元重さん
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「友好関係」と「戦略的互恵関係」
- 佐々木
中国の話は、奥が深いです。
- 伊藤
最近の話で、私、面白い経験をしたものですから申しますと、今、僕は「新日中友好21世紀委員会」のメンバーなんですよ。それは5年の任期で、こちらの民間と向こうの民間が、議論をして友好関係を深めよう、というものなんです。一応、我々は総理に、当時、小泉総理ですね。それから、向こうは胡錦濤さん、温家宝首相に報告するという、かなり大事な委員会なんです。
ところが、小泉さんがずっと靖国に行ってたもんですから、「日中間はこういう難しい時代だけど、でも日中関係は大事だから長期的な視点で頑張ろうね」ってやってたんです。ところが、安倍さんが総理になって、急きょ北京を訪問したでしょう。
あの1週間後ぐらいに、元々、日程が決まっていて、我々は青島で会議することになっていたのです。そうしたら、突然、その会議に行く前日か、その前の日に、外務省から電話がかかってきて、「会議の翌週の月曜日に、温家宝首相と会うから、出張を伸ばして、北京に行って温家宝首相に会ってほしい」と。だから私は残って、例の中南海、初めて入ったんですけど、昔、毛沢東が執務した建物で、温家宝首相とお会いしたんです。
- 佐々木
それは知りませんでした。どんな話を。
- 伊藤
温家宝首相の話で非常に印象に残っていることがあります。普通、中国の要人と会うと必ず出てくるのは、まず台湾の話で念を押されるんですよ。それから、さらに時間があれば、靖国の話が出てくる。今回は両方、一切おっしゃらなくて。
で、日中間というのは、いかに戦略的互恵関係にあるのか、という話をして、最後に、サービス精神もあるんでしょうね、中国側の委員に向かって、「君たち、十分予算はあるか? もしなければ、いつでも言ってくれれば、考えるから」っておっしゃった。だから、そういう意味では、少し変わってきたんですよね。
そのうえ、もっと面白いと思ったのは、月曜日にお会いして、帰国後、安倍総理に木曜日に報告に伺ったのです。そうしたら、我々の委員会の名称が新日中友好21世紀委員会ということで「友好」という言葉が付いているからでしょうか、安倍総理が、「いや、日中友好じゃないですね」っておっしゃいました。では「何ですか?」って伺ったら、「戦略的互恵関係だ」っておっしゃるのですね。
これはあくまでも私の解釈なんですけど、要するに、「友好」というのは恋人みたいなもんなんですよ。仲良くないと意味がないんですよね。で、「戦略的友好関係」っていうのは夫婦みたいなもんです。いや、もちろん夫婦でも仲がいい方がいいんだけど、仲が仮に良くも悪くもなくても、もう、同志みたいなもので、お互いに、離れても離れない。子どももいるし。
- 佐々木
大変わかりやすいです。
- 伊藤
だから、日中も、そう考えた方がいいだろう、と。もちろん、友好であれば、それに越したことはないんだけど、引越しできない隣の国にあるわけだから。いろいろ難しい問題があることも事実で、歴史問題、靖国の問題が仮に解決したとしても、まだ他にもいろんな問題がいっぱいありますよね。ガス田の問題だとか、国境の問題だとか。
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