毛並みがいいのに、どこかすねているような麻生さんですが、私はちょっぴり同情しています。朝日新聞の幼い頃のこんなエピソードが紹介されていました。
小学校の運動会で昼休みがつらかった。友達は親子で弁当を食べている。炭坑を経営する父は事業に忙殺され、母親は吉田茂の娘としてファーストレディー役に忙しかった。親に頼まれた料亭の女将が重箱の料理を持って駆けつけた。「金持ちの家なんていいもんじゃないですよ」と麻生は言う……。
学校で「良い子」ではなかったのも、「勉強」が嫌いだったのも、太郎くんなりの反抗だったのではなかったか。そんなふうに思いました。
苦労のない「坊ちゃん」ではなかった。満たされない苦しさを味わったから、自分流の自己主張にこだわり、近づいてくる仲間には優しく、小泉さんのように冷徹ではなく、義理人情に厚い。
さて問題はその個性が日本の政治にどう生かされるかです。
国会答弁を見ても、自分の言葉で言おうとしている。サービス精神は旺盛で、逃げることは嫌い。向こう気は強いが、深くものを考えるタイプではなさそう。外交は得意と考えているようですが、「米国発金融危機」は世界の力関係を大きく変えるきっかけになりかねない。国際協調は大事ですが、米国の言いなりになっていられない場面も出てくる。
麻生さんは親米ですが、新大統領と適度の距離感を保てるか。中国や韓国とうまくやれるか。外交には演技も必要です。地金が出やすい人ですが、持ち前の存在感を発揮するかもしれない。
あなたは麻生外交に何を期待し、なにが心配ですか。
山田厚史 朝日新聞 シニアライター |
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