民主党も自民党
藤田正美(ふじた・まさよし)
『ニューズウィーク日本版』編集主幹
2004年1月31日
民主党は古賀潤一郎議員の学歴詐称問題を、結局、除名処分ということで決着させるようです。この問題が発覚して以来、民主党幹部、具体的には菅代表、岡田幹事長あたりは古賀議員の「離党」ということで終わらせたいという意向でした。山崎拓さん(自民党前幹事長)をとにかく復活させたくない、という党利党略でしょうか。ところが世論の動向が気になって、「離党」ではなく「除名」ということになりました。それでも議員辞職勧告決議はしない方針ということです。
民主党首脳の優柔不断
自民党の安倍幹事長はこの問題について、「他党に対して厳しい批判を浴びせる民主党が、自党の場合は甘く対応するのであれば、国民の納得は得られない」と批判したそうです。何かと菅さんから攻撃される公明党の神崎さんも相当にきついことを言っています。実際、民主党のイメージはこの一件で大きく傷つきました。どれぐらい傷ついたかは、今年夏の参議院選挙でわかるでしょうが、政権政党へのタイムスケジュールがおそらく相当遅れることになるのではないかと思います。
なぜそんなことになったのでしょうか。それは一にも二にも首脳部の優柔不断にあります。古賀議員の学歴詐称が明らかになったのは、対立陣営からのタレコミとされていますが、事実関係がある程度明らかになった段階で、毅然(きぜん)とした態度で臨むことがいちばん重要でした。思えば、あまり上品とは言えませんでしたが、自民党の鈴木宗男議員を舌鋒鋭く攻撃した社民党の辻元さんが、自らの秘書給与疑惑がもちあがったとき、本人も党もまるで自民党のような受け答えに終始しました。その結果、昨年の衆議院選挙で政党としての存立すら危ぶまれる状況に追いこまれたのです。
自分を忘れた民主党
もちろん社民党の問題は構造的な問題であり、辻元問題だけではないのです。でも政党も他党といかに差別化するかが重要である以上、野党は自らの議員のスキャンダルについては自民党とは違う対応をしなければなりません。そう考えると、民主党の対応ははっきり言って「失格」です。結局は「除名」になったので、多少はダメージを減らせたでしょうが、半分だけリカバリーといったところでしょう。
民主党が対応を間違えた根本原因は、党利党略と大義とを明確にしていなかったところにあります。政党であり、多数派を形成することが目標である以上、党利党略がないということはありえません。しかしそれを前面に押し出せば、一般有権者からは必ず反発を招きます。たとえばヤマタク復活を阻止するため古賀議員に辞職勧告をすることはしない、ということです。ここには有権者にアピールできる大義がありません。大義がなければ有権者を説得できないのです。そしてこの場合の大義とは、民主党は議員のスキャンダルには厳しい姿勢で臨むクリーンな政党であるというイメージだったのです。古賀さんもここをアピールして山崎さんに勝ったのに、それをすっかり忘れてしまったかのような言動はいただけませんでした。
遠ざかる政権政党への道
一つの議席を取ることがどれだけ大変か、政治家はそれをよく知っているだけになかなか思い切りよく決断できないのでしょう。そこを決断することが、国民的支持を得るために非常に重要であることは、小泉さんといういい先例があるのに、民主党は間違ってしまいました。このようなことを間違う政党に政権を託すというのは国民にとって勇気のいることなのです。そうじゃありませんか、菅さん。