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川合アユムさん
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大いなる未完成を目指す
- 川合
24歳ぐらいで悩み始めたとき、とあるおじいちゃんと知り合いになったんですね。そのおじいちゃんは、大阪で闇市をやっていて、昔はすごくダーティーやったらしいんですけど。でも、僕が出会った時はもう、おもしろい、やさしい顔をしてました。ほんまにおじいちゃんで、杖つきながらね、近くの公園から電話してくるんですよ。
たまたま僕が居る時に電話してきて、公園に呼び出されて、お陽さんぽかぽかしてるとこで、おじいちゃんと缶コーヒーを飲みながら話をする。その時おじいちゃんが、僕に問答をふっかけてくるんですよ。
「ここにあるものって命ないよな」と。「命あるものと命なきものの違いがなんかわかるか?」って質問されて、「ようわかりません」と言うと、「よう考えとけ」と言って去っていくんですよ(笑)。
またね、不定期なんですけど数週間すると公園にあらわれてね、また電話してきて、「考えたか?」と聞かれる。「考えたけどわかりません」
「川合くん、海は生きてると思うてんのか?」「生きてると思いますよ」
「山は?」「生きてると思いますよ。自然って生きてますよね」
「生きてないものとの違いは簡単なことであって、分子、原子のレベルまで分解してみたって人間を構成するものとモノを構成するものは、あまり変わらないということが先端科学でわかってきた。だけど自ら変化できる状態か否かによって生きてる状態か命なき状態かって分かれるんちゃうか、変化こそ、そのものが生命(いのち)なんちゃうか」
と言ってそのおじいちゃん僕に教えてくれたんですよ。だから座右の銘は、「変化こそ生命」ですね。
そのおじいちゃんがなんで僕にその言葉を教えようとしたかというと、その当時の僕は、「完成」を目指していたんです。完成に向かってしゃかりきになっている、努力している僕の姿をパッと見透かして、「川合くんが思っている『完成』なんてあれへんねんぞ」ということを教えてくれるためにその言葉を出してきてくれた。そのおじいちゃん、さすがですよね。
「人間は永遠に変化し続けるものであって、完成を目指している錯覚をしているよ」「これ経験して、あれしてこうしてって最終形がここなんだと思ってるかしらんけど、人間ていうのは生まれてから死ぬまで永遠に変化し続けるるものなんだよ」と。
「こぢんまりした完成を目指すよりも、大いなる未完成を目指してめちゃくちゃしてみい」と言ってそのおじいちゃんいなくなったんですね。
今どうしてるかわからないけど。問答ということを教えてくれたのも、そのおじいちゃんですね。問うていくっていうこと。答をいきなり言われても、そのころの僕は吸収しなかっただろうと思う。「何言ってんねんこのじじいと」思ってたと思うんですよ。
だけど真剣に問いをかけられて、しばらくしたら「考えたか」言うて、あらわれるわけですよね。
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