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平田 オリザさん
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ものすごく、パズルを解くように全部分かって
- 平田
韓国に行った時に初めて、それまでのことが何だったのかが、ものすごく、パズルを解くように全部分かって。
要するに英語だと、英語の論理に合わせるしかないじゃないですか。それはもう、留学にしろ、旅行にしろ、向こうに行ったら向こうの論理に合わせるしかないし、日本の中にいると「楽だな、これを皆分かってくれて」と思うし。だけど、韓国語は、基本的に日本語と文法は一緒なのです。でも、やっぱり、もうちょっと説明しないといけなかったりするんです。だから、すごく相対化されて、客観的に日本語を見ることができて、「こういう違いなのね」と。
それから、何より良かったのは、僕の韓国語のクラスには、フィリピン人もいるし、ドイツ人もいるし、アメリカ人もいた。アメリカ人が一番劣等生なんですね、異文化を受け入れないので。特に彼らは、外国語を習得するっていうことにほとんど慣れていないでしょ。どんどん落ちこぼれていくんですね。で、僕達は文法構造が同じだから、すごく楽で、「何だ、日本人、語学が苦手じゃないじゃん」って(笑)。
- 佐々木
(笑)
- 平田
それで、そのクラスで英語がしゃべれるのが僕しかいなくて、韓国語の先生は韓国語しかしゃべらないというメソッドで教えるので、だから、小学校の低学年の子が、できる子ができない子に宿題とか見てあげたりするじゃないですか。あれと同じ状態で、すぐに英語で韓国語を教えるようになって「これは、こうなってるんだよ」って。そうすると、彼らが何を分からないのかが、ものすごくよく分かったんですね。そのことで、「こういうことなのね。こんなことでも、分からないんだ」っていうのが分かった。
一番おもしろかったのは、文法が日本語と同じですから、ここでは日本語で説明すると、「教室で勉強します」と「教室にいます」って、この「で」と「に」の違いが分からなくて、その時にアメリカ人が怒り出しちゃったんですよ。「韓国語は論理的じゃない」って。「いや、これは、動作の時は「で」で、存在を表す「いる」っていう時は「に」で。あなた達だって、be動詞が不規則変化するじゃないか」って言ったら、「ああ」って言って。
だから、これはもう、違いであって、優劣ではない。どうしても英語に合わせようとすると、コンプレックスを持ってしまったり、優劣として感じてしまうんですけど、そこは1年間トレーニングを積んで客観的になれたのが、よかったですね。
- 佐々木
それは、あえて日本語と似ている韓国という国を選んだっていうことなんですね?
10/31
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