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根本かおるさん
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迫害とか身の危険があったというような話を、毎日
- 根本
本当に、人の運命を左右してしまいかねない仕事でした。本当に迫害を受けている、あるいは身の危険がある人を誤って判断して、強制送還になってしまうと、またひどい目に遭ってしまいますからね。夜も眠れなかったりとか、ありましたよ。
- 佐々木
私がそういう立場だったら、「何だか分からないけど、とりあえず認定しちゃおうかな」って気持ちになると思うんですけど(笑)、そういう気持ちにはならない? やっぱり、「ノー」って言わなきゃならない人もいるわけですよね?
- 根本
そうですよね。でも、そこはなるべく寛大に。本当に迷ったら……。
- 佐々木
迷ったら受け入れる。どちらかというと。
- 根本
どちらかというと、リベラルな判断をするという方針はあるわけですけれども、それでも「どうかな」という場合があったりして。ただ、これも1〜3審という形になっていますので、1回撥ねて、それでおしまい、ということではありませんけどね。1審で悩む場合もあれば、3審、上告審みたいなところで悩む場合もあるので、それは本当に苦しい判断になりますよね。
- 佐々木
どのぐらいの人数が来るものなんですか? 1日に。
- 根本
例えば、1日、私は、朝から晩まで3〜4人ぐらいから、迫害とか身の危険があったというような話を聞いていましたかね。
- 佐々木
毎日3〜4人聞いてくると、今度は逆に、どれも皆同じように聞こえてきて、「本当に難民かな? このぐらいなら、今までにも、いっぱいいたんじゃないか?」って思ってしまうのも……。
- 根本
おっしゃる通りで、本当に鈍感になってしまって、麻痺してくるんですよね。ですから、すごく危険なことだと思うので、それは後に、職員のシフトの中で、週に1回はオフというか、そういう聞き取り調査をしなくて済むような形で。いつも新鮮に、思いやりを持って人に接せるように(笑)。
- 佐々木
そうですよね。変な話、聞くとみんな、難民のように思えるけど、それが何十人も毎日接していると、りのない仕事っていったら変だけど……。
- 根本
そうですね。ですから、やっぱり、ある程度の年数で、次の仕事に移っていくっていうこととかも。それはお互いのために。庇護申請者のためにもそうですし、自分の人間性のためにもそうだし。
- 佐々木
そうですよね。UNHCRの構造上も、絶対に必要なことなんでしょうね、きっと。
- 根本
そうですね。ですから、国際スタッフに関していうと、任地の生活環境にもよりますけど、2〜5年をもって、次から次へと移っていく「ローテーション義務」、という制度がありますね。
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