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根本かおるさん
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ネパールの現場事務所の所長でした
- 佐々木
(笑)そうなんだ。最後のネパールは、所長になられていたんですよね?
- 根本
そうです。それは国代表ではなくて、難民キャンプを預かっている現場監督みたいな形ですけど、ネパールのダマクという田舎町にある、7つの難民キャンプでの活動を統括するオフィスの所長でした。でも規模的には、国代表の事務所よりも大きかったですね。
- 佐々木
どのぐらいの?
- 根本
全部で50人、その中で12人が国際スタッフで、本当にいろんな国籍の人たちが一緒になって仕事をしていて、当時は、日本、アメリカ、スーダン、ケニア、インド、ドイツ、デンマーク、カナダ、イギリス、それにネパールという多国籍なチームでした。いろんな国の人たちと一緒に仕事をしていました。
- 佐々木
そういう、国際スタッフとローカルの人たちが混じっている組織をマネージするという意味でも、今度はものすごくリーダーシップが必要ですよね。
- 根本
そうですよね。ここでは本当に勉強になりました。先程「いろんな違った仕事を選択して回ってきた」と言いましたけど、人をまとめる醍醐味っていうものを、ネパールでは勉強させてもらったかな、と思います。
文化も背景もバックグラウンドも違う人たちをまとめあげるので、ものをはっきり言わなきゃいけない。「あうんの呼吸」などということは、絶対に期待できません。何を目指しているのか、ということのコミュニケーションを、すごく心掛けてやらないといけない、ということですね。
それから、同僚や相手国の文化や宗教を尊重する。差別主義者だと思われたら、国連という多国籍なカルチャーでは生きていけませんから。
- 佐々木
具体的には、どういうふうに、どんなビジョンを伝えていったんですか?
- 根本
そこは、16年に及ぶ長期化した難民状況を扱っているオフィスなので、慣れがあったんですね。「今までこうだったから」って、すべてを当たり前として捉えている節がある。
でも、そこで「いや、そうではないんじゃないの? それが本当に正しいのか、あるいは本当にできないことなのか、整理して、決めつけないで議論することが必要なんじゃないでしょうか?」っていうところから始めました。
そういう、今やっていることを当たり前にしないっていう中で、いろんな気づきがあって、事務所の運営とか、あるいはNGOと一緒にやっていく仕事の方針とか、政府との話し合いとか、いろいろ変えていくことができるんですね。
あと、ネパール特有のことですが、カースト制があって、カースト上での上下関係や社会的な差別があるんです。低位カーストの人が作った食事を、上位カーストの人は口にしない、あるいは低位カーストの人が上位カーストの家の台所に入れない、もしそういうことがあったら、その場にあった食べ物は全て捨てる、というような風習があるぐらいですから。
そこは、国連として、それから難民を助けるという仕事に関る者として、カーストを越えて一つのチームとして取り組めなくてどうするの、と。
UNHCRをあげてマイノリティーの底上げに大変積極的で、現地職員の採用では、同じ資格であれば低位カーストの人を優先して採用するという方針でした。一般的に教育水準が低い低位カーストから適任者を見付けるまで時間はかかりましたが、私の代でダマク事務所では2人、最下層のカーストからスタッフを採用することができました。
高位カースト出身の職員は、最初は「お手並み拝見」という感じで冷ややかに見ていましたけれども、実際に下層カーストの同僚が入ってくると、徐々に仲間として受け入れるようになっていきましたよ。
あと、「私たちの仕事は、人を助けることなんだ」ということを職員に徹底しました。国連機関も、ある意味では「大官僚機構」ですから、制度や方針を柔軟に解釈したり、あるいは10分割けば人を助けられるところが、官僚的に杓子定規に対応してしまうことが、ないわけではないですから。
そこは、「we are here to help people」、人を支援するために仕事をしているんだからと、当たり前のことではありますが、檄を飛ばしていました。
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