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106
根本かおるさん
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本当の女性の代表っていうのは、いなかった
佐々木
たとえば?
根本
政府の制度が駄目だから、と突き放してしまうことは簡単です。でも、難民の権利を代弁するのが役目の私たちが諦めてしまったら、何も変わらなくなってしまいますから。
例えば、法律とか制度の問題もあれば、本当に小さな、私自身が頑張ればできることもいろいろあるわけですが、それぞれの場所で、今ある現状を、本当に目指さなければいけないところと照らし合わせて、今のままで本当にいいのか、いけないんだったら、どのように影響を与えていけばいいのかっていうことを、職員それぞれのレベルで考えていったんです。そうすると、いろんなことが分かってきて。
例えば、先程申し上げた女性の問題もそうなんですけど、以前は、難民のリーダーのグループの中に、全然女性がいなかった。あるいは、女性がいても、男性の息が掛かった人でした。本当の女性の代表っていうのは、いなかったんですね。それがいいわけがない。そこをどう変えていくか、とか。
あるいは、ちょっと難しくなっちゃうんですけど、ネパールでは、難民の間で子どもが生まれても、きちんと出生届っていうのが受理されていなかった。出生証明書っていうのは、いらない、というような慣習だったんです。でも、それはいけないんですよ。ネパールは子どもの権利条約を批准していて、子どもの出生届の義務を国際的に負っているんだし。
けれども、「ブータン難民たちがネパールにやって来てから、ずっと今までそうだったから」というので、ずっときちゃった。でも、それは、いけないよね、話し合おうよって言うと、「前にやったけど、ダメだった」って。
そこで、前にダメだったのは、何がネックだったのかな? その政府の要人に『うん』と言ってもらうには、どの人を突き動かせばいいかな? って、いろいろと作戦を練ってミーティングを持ったんですよ。そうしたら、「yes」ってなったの。
佐々木
それは嬉しいですね。ものすごく成果がはっきり分かるし。
根本
そうすると、やっぱり、出生届を出す業務をするために活動資金が必要ですよね。で、資金を集めることに関しては、「じゃあ、それは私が何とかするわよ」っていう形でやっていく。折角合意を取り付けたのに、活動資金がないからできませんでした、好機を逃しました、にはしたくありませんでしたし。本当に、当たり前と思っていることの中に、落とし穴があるっていう感じですかね。
ネパールでの所長としての勤務は1年半と短いものではありましたが、その間に、発生してから16年、「前例に従う」ことが当たり前になっていたオペレーションに、結構画期的なことを導入しました。例えば、太陽光発電パネルによる街灯をキャンプに設置するとか。キャンプには電気が通っていなくて、夜は真っ暗。ろうそくや灯油を買うお金は難民には無いわけです。それで、女性たちが怖がっちゃって。
これは、代替エネルギー・プロジェクトを試そうと日本の方々に協力を呼びかけたら、まず浜田省吾さんのチャリティー団体「J. S. Foundation」が、そして松下電工が寄附してくださって。
ダマクの事務所は、特に難民女性のためにチームとして尽力したということが評価されて、「Gender Team Award」というUNHCRの内部表彰を受けました。「えっ、ネパールのこんな僻地で働いている私たちが、受賞?」と意外で。でも、みんな、とてもしんどい中で仕事をしていたので、この受賞のおかげで、士気が上がりました。
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